エリートだった父が「定年退職」を機に激変、引きこもりに
父の定年退職と、自身の就職が同じタイミングだったという20代男性。このとき母に、「お父さん、お母さんの老後は、何も心配ない。だから自分のためにしっかりと働きなさい」と言われたとか。
大手企業の部長だった父。母いわく、定年退職金は4,000万円ほど、貯蓄も3,000万円程度、さらに株式や投資信託などもあり、定年までに老後に向けた資産形成は完璧だとか。さらに「お父さんが頑張って働いてくれたおかげ」と感謝を口にします。
父は父で、無事、定年まで勤め上げることができたのは母のおかげという想いが強く、60歳定年退職後に夫婦で1ヵ月ほど海外旅行をプレゼントしていたとか。母はよほど楽しかったのか、帰国後、写真や動画をイヤというほど見せられ、語られたといいます。ただ父はその後……
――毎日、何もすることがなく、ただぼんやりとしている
――外出するのは、母と一緒に買い物にいくときだけ
――お金も時間もあるのに……こんなことをするために、仕事を辞めたのだろうか
男性の投稿に対して、「いまは燃え尽き症候群なのかも」という声も。
内閣府『こども・若者の意識と生活に関する調査 (令和4年度)』の40歳~69歳対象調査によると、外出頻度の低い引きこもり状態の人に対し、今の状況になった年齢を聞いたところ、最多は「60~64歳」で21.8%。「65~69歳」が15.4%と続きます。それまでバリバリ現役で働いていた人が、定年とともにやることがなく引きこもり状態に……男性の父親のようなケースは、決して珍しいことではありません。
日本経済団体連合会『2021年9月度 退職金・年金に関する実態調査』によると、大卒総合職の平均退職金は勤続38年(60歳想定)で、2,440.1万円。直近給与の40ヵ月分(つまり月収61万円)が支給されています。支給月収が平均だとすると、男性の父は、定年退職前、月収75万円ほどあったと考えられます。また総務省『家計調査 貯蓄・負債編(2023年平均)』によると、世帯主60代世帯の平均貯蓄額は2,432万円、平均負債額は201万円。貯蓄-負債の純貯蓄額は2,231万円です。
高所得のエリートサラリーマン世帯でも老後を見据えて資産形成を進めるのは難しく、だからこそ、将来が不安だからと定年後も働き続ける人が8割を占めるといわれています。そんななか、平均以上の退職金に、平均以上の貯蓄。立派です。年金支給は5年先であるものの、経済的に余裕があるからこそ、定年退職に踏み切れたのでしょう。
そんな資産形成のお手本ともいうべき、男性の両親。そしてそれを可能にした父。しかし定年で現役引退したあとの姿は、なんとも寂しいものでした。