魚介類をたくさん食べる「和食」と「地中海食」が、長寿食として注目されています。しかし、京大名誉教授であり、80代で現役医師である家森幸男氏によると、健康的な要素しかない魚にも「不健康になる食べ方」が存在する、といいます。家森氏の著書『80代現役医師夫婦の賢食術』(文藝春秋)より、詳しくみていきましょう。
健康寿命を延ばす「最強食材」=魚だが…まさかの“寿命を縮めてしまう”「危険すぎる食べ方」とは【京大名誉教授が助言】
寿命を縮める魚の食べ方
ただし、魚を食べてさえいれば、どんな食べ方でもいいというわけではありません。それを端的に示す、面白い調査結果があります。
カナダの北東にあるニューファンドランド島はご存じでしょうか?
世界三大漁場として名高い、漁業の盛んな島です。当然、現地の人は魚をたくさん食べているだろうと思い、私たちはその島で健診をしました。
また、比較のために、同じカナダでも、フランス語圏で食文化もフランスに近い東部のケベック州、モントリオールでも健診をすることにしました。
その結果は非常に意外なものでした。
高血圧は、ケベックが男性15%、女性12%しかいないのに、ニューファンドランド島は、男性が49%、女性が43%と、半数にも迫る勢いです。さらに、肥満の人もケベックは男性15%、女性10%なのに、ニューファンドランド島では男性43%、女性31%もいるのです。コレステロールもニューファンドランド島のほうが数値が悪い。魚の豊富さからいえば、ニューファンドランド島のほうがずっと上だろうに、これはなぜなのでしょうか?
その原因は、魚の「食べ方」にありました。
ニューファンドランド島は、魚が獲れすぎるので、塩漬けに加工して、どんどん北米大陸に輸出します。そして、自分たちも、その塩漬けの魚に衣をつけて揚げ、ポテトフライと一緒に「フィッシュアンドチップス」として、食べるのです。
「脂と塩」は悪魔の“短命コンビ”ですが、この地の魚の食べ方がまさにそれでした。
一方、ケベックの人たちは、セントローレンス川で獲れる魚介を、毎日のように、新鮮なまま、ふんだんに食べています。
24時間尿を調べると、ケベックのほうが塩の摂取が少ない上に、塩の害を打ち消すカリウムを含む野菜も多く摂っています。
同じカナダに住んで、健康によいはずの魚を食べていても、食べ方次第で、天と地ほどの差が出るというよい例です。