住宅ローンの審査には事前審査と本審査があります。事前審査に通過し、手付金等を支払っても、本審査で謝絶されたり、融資限度額が減額されたりするケースは少なくありません。具体的にはどのようなケースでしょうか? また、そうした場合に備えた対策はあるのでしょうか? 本記事では、Mさんの事例とともに不住宅ローン審査における注意点について、FP事務所・夢咲き案内人オカエリ代表の伊藤江里子氏が解説します。
年収800万円の40代会社員、5,500万円の“住宅ローン審査”を無事通過!6ヵ月後の引き渡しを心待ちにするも…一転「やっぱり貸せません」のワケ【CFPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

ローン特約の重要性

Mさんの車のローンは5年間で終了しますが、本審査に大きく影響してしまったようです。ほかの借入れがあれば返済期間が残りわずかであっても、審査に影響があるので注意が必要です。

 

ローン特約……住宅ローンの審査が通らなかった場合には、契約を解除できる、とする特約条項。

(売買契約書では、「融資利用の特約」「融資に関する事項」などと記載されます)

 

契約後に買主から解約する場合は、すでに支払っている手付金の放棄、状況によっては相手への損害賠償が発生することもあります。

 

しかし、買主が金融機関の融資を利用して住宅を購入する際にローン特約をつけていれば、融資承認が得られない場合、手付金も返還してもらい違約金を支払うことなく売買契約を解除できます。これは、買主保護の特約ですが、売主のために融資承認を取り付ける期日を設けていることがほとんどです。


期日を設けるとはいえ購入の意思がなくなった買主が、この特約を悪用して故意に住宅ローンの承認が得られなくなるような行動をするかもしれません。このようなトラブルを避けるため、

 

・自己都合による転職または退職
・融資承認条件の不履行
・ローン関係書類への不実記載、必要書類の未提出
・売買契約締結以降に、当該住宅ローン以外の借入れ、保証の引き受け

 

といった買主の行為によってローンが不成立になった場合はローン特約による解除を適用しない、と明記している場合もあります。

 

ローン特約による契約解除ができないのであれば、融資承認期日までに5,500万円の融資してくれる金融機関を探すか、手元の資金から出すなど資金計画を見直す必要があり、教育資金準備にも影響があります。住宅ローンの事前審査と同じ金融機関に車のローンを申し込んでいれば、住宅ローンの本審査に影響があることにMさんは気づけたかもしれません。
 

<参考>

※ 住宅金融支援機構「フラット35」ご利用条件より(2024年5月21日現在)https://www.flat35.com/loan/flat35/conditions.html#conditions04


 

伊藤 江里子

FP事務所 夢咲き案内人オカエリ 代表