社外人脈はサラリーマン時代がポイント
社外人脈作りのポイントは、まず会社という組織の看板があるサラリーマン時代に始めることです。
多くのサラリーマンの皆さんは、「サラリーマン時代の人脈なんか会社の看板での付き合いだからお互い会社を離れたらそれでおしまい。本当の人脈は会社を離れてから作る必要がある」と思っていますが、そうではありません。お互い組織の看板を背負ったサラリーマン時代こそチャンスです。
筆者は52歳で独立して個人事業主となりました。この個人事業主という立ち位置は、サラリーマンからすると異質であり微妙な存在です。名刺交換するにしても「何か売り込まれるのではないか?」と本能的に疑うところから始まります。筆者も30年間サラリーマン生活を送ったのでその感覚はわかります。
これがお互いサラリーマン同士では会社の看板があるので、安心してつながることができます。ファーストコンタクトは、個人事業主よりもサラリーマンのほうがお互いのハードルははるかに低いのです。ポイントは、サラリーマン時代に一度つながった関係をその後も維持することです。そうすることで、個人事業主として独立後も今までと同じような間柄を維持できます。
独立した方は経験したことがあると思いますが、独立当初にはかなりの確率で異業種交流会のお誘いがかかります。朝に開催されるケースが多いですが、ネットワーク作りを目的に1分間自己紹介や名刺交換が行なわれます。個人の性格や業種などによるところも大きいと思いますが、筆者の場合は、こうした異業種交流会では長く続く人脈は作れませんでした。会場ではお互いに商売のネタを探そうというギラギラとしたものを感じ、「サラリーマンの方が本能的に感じる違和感もこうした雰囲気なのか?」と思ったものです。
いずれにしても、独立後はどうしても商売がらみの人脈が増えるので(これはこれで重要ですが)、長く続くニュートラルな人脈はサラリーマン時代に作っておくのが鉄則です。
効果的な「社外人脈」構築の方法
サラリーマン時代の人脈作りも利害関係のからまない関係のほうがうまくいきます。経験上、一番強く長い結び付きになるのは、関心のある領域・自分の専門領域の勉強会、趣味の集まり、会社を横断した業種団体の委員会活動などです。こうしたつながりは、同じ志を持った人たちが集まるので、今までの付き合いとは違う種類の人たちとつながることができます。
また、友だちの友だちといった形で急速にネットワークが広がるのもこうした勉強会などを通じたネットワークの特徴です。筆者は2021年から東京都主催の東京セカンドキャリア塾(プレシニアコース)の講師を務めていますが、受講者同士が研修期間を通じて自主的に全員が友だちになり、同期だけでなく別の期の受講者ともさまざまなルートを通じてすぐにつながっていく様子を目のあたりにしています。シニアからのこうした会社以外の人脈は貴重です。筆者もサラリーマン時代にこうした講座があれば間違いなく参加していたと思います。
今シニアからのリカレントが話題になっていますが、これから研修受講を検討する場合も人脈作りの観点が重要です。研修受講にあたっては、もちろんそのコンテンツ(内容)をメインに選ぶことになりますが、シニアからの学びにおいては、「コンテンツ」だけでなく「参加者のコミュニティ」を“買う”視点も重要です。研修でコミュニティを“買う”ためには、次の視点が判断基準になります。
・1時間2時間、1日の研修ではなく、複数日同じメンバーが参加する研修
・話を聴くだけでなく、グループワークなど参加者同士のコミュニケーションの機会が設けられている研修
・研修終了後のエクステンションセミナーなど継続学習の機会が設けられている研修
・受講メンバーの同期会(自主的なものも含む)的なつながりがある研修
手前味噌になりますが、筆者が修了者の会の世話人代表を務めている一般社団法人ビューティフルエージング協会のライフデザイン・アドバイザー(LDA)養成講座(6日間、継続学習の機会あり、同期会あり)や筆者が講師を務めるライフシフト大学(株式会社ライフシフトが運営)なども期間も長く受講者間のネットワークが構築できる「コンテンツ&コミュニティ」を兼ね備えた学びの場です。
繰り返しになりますが、利害関係のからまないコミュニティで培ったサラリーマン時代からの社外人脈が「人生100年・現役80歳時代」の貴重な変身資産になります。実際に独立すると独立当初は金銭的にも時間的にも余裕がなくなるので、安定した定期収入と時間的な余裕があるサラリーマン時代にこそ、こうした学びに積極的に自己投資をすべきです。
木村 勝
行政書士
リスタートサポート木村勝事務所 代表