遺言作成の際に気をつけたい「遺留分」…不動産評価の際の注意点
男性の不甲斐なさを責める声がほとんどですが、このケースのように、父(母)が亡くなった際の一次相続では穏便にことが進んだのに、母(父)が亡くなった際の二次相続では残された家族が揉めるということはよくあること。それは母(父)が、争いごとのストッパーになっていたから。そんな存在がいなくなったとき本音が噴出し、トラブルに発展するというわけです。
このようなトラブルを避けるためにも、遺す側は遺言書の作成が基本。遺言には遺言をする人(遺言者)が自分の手で書いて作成する「自筆証書遺言」、遺言の内容を記載した文書(自筆でなくてもよい)に遺言者が署名押印してこれを封筒に入れ、文書に用いた印で封印し、これを公証人1人及び証人2人以上の前に提出して作成する「秘密証書遺言」、遺言者が、2人以上の証人の立会いのもとで遺言の趣旨を公証人に述べ、公証人がこれを筆記し、その内容を読み聞かせ、筆記の正確性を承認した全員が署名押印して作成する「公正証書遺言」の3つがあります。
そして遺言書作成の際に気をつけたいのが「遺留分」。これは「一定の相続人に対して、遺言によっても奪うことのできない遺産の一定割合の留保分」。簡単にいえば、「残された家族の生活を保障するために、最低限の金額は相続できる権利」です。遺留分の権利が認められるのは、配偶者、子(代襲相続人も含む)、父母などの直系尊属で、兄弟姉妹は認められません。遺留分の相続財産に対する割合は法定相続分の半分です。
遺留分の計算をするとき、基本的に相続が発生した時の時価で計算します。不動産を評価する場合、相続税の計算すでは相続税評価額を採用しますが、遺留分を計算する際には実際の売買価格を基準とします。相続税評価額ベースでは遺留分を侵害してなくても、実際の売買価格ベースにすると遺留分を侵害しているケースがあるので要注意です。
もしこの男性(長男)が「遺留分の侵害だ!」と主張したら……「いや、実家を相続するあんたのほうがもらっているから」と反撃され、実家まで失うことも。静かに身を引いたほうがいいかもしれません。
[参考資料]