複雑な年金制度。一見お得にみえるものも、しっかりと理解していないと、思わぬ損をするケースも。そのひとつが「年金の繰下げ受給」。年金受給を遅らせる分、年金が増えるというものですが、いくつもの落とし穴が……みていきましょう。
年金が最大2倍に!甘い言葉にのった〈年金月12万円〉70歳の元サラリーマン、意気揚々と「繰下げ受給」も〈200万円もらい損ね〉に撃沈

下位10%の元サラリーマン「年金を増やすこと、できませんか?」

多くが公的年金に依存する老後。だからこそ、どれくらい年金がもらえるのか、切実な問題です。厚生労働省『令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、老齢厚生年金受給者の平均年金受給額は、併給の老齢基礎年金と合わせて、平均月14万3,973円。65歳以上の男性に限ると16万3,875円、女性に限ると10万4,878円です。

 

元サラリーマンについて年金受給額の分布をみていくと、年金月17万~18万円あたりが中央値、年金月11万~12万円あたりが下位10%、年金月23万~24万円あたりが上位10%となります。

 

【老齢厚生年金受給者の受給額の分布】

月11万円未満:8.3%

月12万円未満:12.4%

月14万円未満:23.2%

月15万円未満:30.1%

月16万円未満:38.0%

月17万円未満:46.7%

月18万円未満:56.0%

月20万円未満:73.3%

月22万円未満:85.4%

月23万円未満:89.0%

月24万円未満:91.3%

 

たとえば65歳から受け取る年金が月12万円という元サラリーマン。令和6年度、老齢基礎年金が満額月6万8,000円なので、厚生年金は月5万2,000万円。ただこれは額面。実際の手取りは、額面の85~90%とされています。

 

ライフスタイルにもよりますが、できればもう少しもらうことできれば、生活は楽なのに……誰もが思うに違いありません。

 

それであれば……と推奨されることが多いのが、年金の繰下受給。これは老齢年金を65歳で受け取らずに、66歳以後75歳までの間で繰り下げて、増額となった年金を受け取れるというもの。その加算額は、1ヵ月遅らせるごとに8.4%。つまり70歳まで繰り下げることができれば42.0%増、75歳まで繰り下げることができれば84%増と約2倍。しかも増額率は一生変わりません。