遺族年金の請求「短期要件か、それとも長期要件か」どちらが得か?
では具体的に計算していきましょう。
まず遺族基礎年金。子どもがいないので、受給対象外となります。仮に小学生の子どもが2人いたとしたら、年128万5,600円、1ヵ月あたり10万7,133円を受け取ることができます。
次に遺族厚生年金。実は請求時の選択により70万円近い差となります。どういうことなのでしょうか。「遺族年金の請求書」(年金請求書 様式第105号)のなかには、以下、ア~オについて「はい・いいえ」で答える項目があります。
ア 死亡した方は、死亡の当時、厚生年金保険の被保険者でしたか。
イ 死亡した方が厚生年金保険(船員保険)の被保険者もしくは共済組合の組合員の資格を喪失した後に死亡 したときであって、厚生年金保険(船員保険)の被保険者または共済組合の組合員であった間に発した傷病 または負傷が原因で、その初診日から5年以内に死亡したものですか。
ウ 死亡した方は、死亡の当時、障害厚生年金(2級以上)または旧厚生年金保険(旧船員保険)の障害年金(2級相当以上)もしくは共済組合の障害年金(2級相当以上)を受けていましたか。
エ 死亡した方は平成29年7月までに老齢厚生年金または旧厚生年金保険(旧船員保険)の老齢年金・通算老齢 年金もしくは共済組合の退職給付の年金の受給権者でしたか。
オ 死亡した方は保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間(死亡した方が大正15年4月1日以前 生まれの場合は通算対象期間)を合算した期間が25年以上ありましたか。
さらに『アからウのいずれかに「はい」と答えた方で、エまたはオについても「はい」と答えた方』に対して、以下からいずれかを選択するように促されます。
□年金額が高い方の計算方法での決定を希望する。
□指定する計算方法での決定を希望する。
⇒右欄のアからウのいずれか、またはエもしくはオをOで囲んでください。
ここが重要な分かれ道となります。
遺族厚生年金には上記ア~ウの要件である「短期要件」と、エ~オの「長期要件」があり、「短期要件」は保険料納付要件*もあわせて満たしている必要があります。
*死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間と保険料免除期間を合わせた期間が3分の2以上あるか、または死亡日の属する月の前々月までの1年間に保険料滞納期間がないか、いずれかの条件を満たすこと
実際に遺族厚生年金額を計算する際、「短期要件」では、厚生年金加入期間が300ヵ月に満たない場合には300ヵ月として計算し、「長期要件」では実際の被保険者期間で計算します。また中高齢寡婦加算は長期要件での請求の場合、亡くなった夫の厚生年金の被保険者期間が240ヵ月以上でなければなりません。
それらを加味して単純計算すると、短期要件の場合、中高齢寡婦加算がされ「110万5,290円」。長期要件の場合、夫の厚生年金被保険者期間が239ヵ月なので中高齢寡婦加算はなく「39万2,987円」。前述の通り、年間70万円近い差が生じるわけです。
これはあくまでも一例で、どんな場合でも「短期要件」を選択したほうが良いというわけではありません。実際に請求する場合は、年金事務所に相談するか、「年金額が高い方の計算方法での決定を希望する。」にチェックをいれるほうがよいでしょう。
[参考資料]