老齢年金支給開始年齢の3ヵ月前になると、日本年金機構からA4サイズの緑色の封筒が届きます。この封筒が届くのは、原則として日本年金機構で受給資格期間を満たしている ことが確認できる人です。万が一、封筒が送られてこない、といった場合は問い合わせてみる必要があるかもしれません。本記事では、Aさんの事例とともに65歳時の年金の手続きについて、CFPの伊藤貴徳氏が解説します。
年金200万円のはずが…元会社員男性、「65歳の3ヵ月前」なのに年金機構から「緑色の封筒」が送られてこず、動悸が止まらない【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

65歳の誕生日の3ヵ月前

今年で65歳を迎えるAさん(元会社員の男性)。60歳で無事定年退職を迎え、仕事漬けでこれまでできなかった趣味や旅行に思い思いの時間を過ごしています。 退職金や貯蓄等で、この5年間、問題なくやりくりしてきましたが、65歳の誕生日が近づいてきた今日このごろ、もうすぐ受け取る自分の年金のことが気にかかります。 

 

「年金の請求書は自宅に届く」「緑色の封筒」「誕生日の3ヵ月前」といった、年金に関する情報をテレビやネットから断片的に得ていました。周囲の同世代の友人からもそういった話を聞きました。しかし、自分で調べるのはなかなか億劫で、行動に移せないままでいたのです。年金はこれからの生活の大切な基盤。重要なこととは思いつつも、重い腰が上がらない……。もやもやとしていましたが、あるとき、本格的に焦り始めます。

 

なぜか誕生日の3ヵ月前を過ぎても「例の書類」が届かなかったのです。Aさんが以前にねんきん定期便で確認した年金の受給見込み額は年200万円でした。

 

「このまま誕生日を過ぎても、請求書が届かなかったら……」

 

 「本当に問題なく年金を受け取ることができるのだろうか?」 

 

書類を待つ日を重ねるにつれ、だんだんとAさんは動悸が止まらないほど不安に駆られるのでした。 なぜAさんのもとに例の書類……「緑色の封筒」は届かないのでしょうか? 

「緑色の封筒」が届かないワケ 

Aさんは64歳から「特別支給の老齢厚生年金」を受給しており、このことが関係していました。 そもそも特別支給の老齢厚生年金とはどのようなものでしょうか? 詳しくみていきます。

 

「特別支給の老齢厚生年金」とは?

特別支給の老齢厚生年金とは、年金の法律が改正された昭和60年に設けられた年金制度です。 昭和60年の旧国民年金法までは60歳から年金を受け取ることができましたが、新法施行からは65歳からの受給となりました。そのため、新法に変わったことで受給開始年齢に急激な差が出ないよう、特別支給の老齢厚生年金という制度を設けることで段階的に受給開始年齢を後ろ倒しにしていったのです。 

 

この特別支給の老齢厚生年金は、基本的にはサラリーマンなどの厚生年金の加入が1年以上あり、男性は昭和36年4月1日までに生まれた方が対象です。女性は以前、定年退職の年齢が男性よりも早かったという背景から昭和41年4月1日までと5年伸びています。