人手不足が深刻化するなか、優秀な人材を確保しようと、初任給の引上げを決める企業が増えています。その結果、既存社員の給与と逆転劇という、まさかの事態に陥っている企業も。自虐に走るしかない、先輩社員についてみていきましょう。
初任給「25万円超え」でガッツポーズの新入社員に「奢って!」と自虐で甘える「先輩社員の給与額」

大卒サラリーマンの平均給与「20代前半」で月24万円、「20代後半」で月28万円…

中央労働委員会『令和5年賃金事情等総合調査』によると、令和5年の春闘で交渉が妥結した企業のうち「ベースアップの実施」したのが72.3%、「定期昇給の実施・賃金体系維持」が67.9%でした。また基本給部分の賃金表ありとする企業のうち、「ベースアップを実施」としたのは80.9%。「改定なし(据え置き)」は19.1%でした。

 

賃金改定なし、でも人手確保のため初任給アップ。またはベースアップはしたものの、それ以上に初任給を引上げ……そんな判断をした会社は、想像以上に多いのかもしれません。

 

厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』によると、20代前半の平均給与は月収で24.3万円。20代後半になるとプラス4万円弱、さらに30代前半はプラス4万円強。平均給与はアップします。「初任給が25万円を超えた!」となると、入社2年目の社員を上回ってしまう可能性も。「初任給が30万円を超えた!」となると、入社7年目の社員も超えてしまう勢い。あくまでも平均値なので、前出のように「入社10年目の自分を超えてしまった」というのも冗談ではないのでしょう。

 

【年齢別・大卒サラリーマン(正社員)の平均給与】

20~24歳:243,200 円/3,561,800 円

25~29歳:282,700 円/4,740,000 円

30~34歳:325,600 円/5,493,600 円

35~39歳:378,500 円/6,455,400 円

40~44歳:424,100 円/7,041,500 円

45~49歳:467,400 円/7,745,000 円

50~54歳:505,700 円/8,396,500 円

55~59歳:532,300 円/8,791,200 円

60~64歳:449,100 円/6,901,400 円

※数値左より月収/年収

 

厚生労働省『令和2年転職者実態調査』によると、転職理由のトップは「(賃金以外の)労働条件が良くなかった」で28.2%。続いて「満足のいく仕事内容でなかったから」26.0%。そして「賃金が低かったから」が23.%と、転職者4~5人に1人は給与が不満で会社を辞めていることが分かります。

 

仕事内容と比べて給与が低い、周りと比べて給与が低い……一概に「給与が低い」といってもさまざまですが、「新卒社員よりも給与が低い」はさすがに仕事に対するモチベーションが下がり、転職する大きな理由になるでしょう。人材確保のつもりで初任給アップが、人材流出を招く……そんなまさかの事態を引き起こさないよう、既存社員の給与にも目を向けてもらいたいものです。

 

[参考資料]

厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』

株式会社ジェイック『2024年度の新入社員に初任給の使い方を調査』

中央労働委員会『令和5年賃金事情等総合調査』

総務省『給与・定員等の調査結果等』