結婚を機に死亡保険に加入した、という人も少なくないでしょう。その死亡保険に死亡時以外の保障が付帯されていることが多いことをご存じでしょうか。本記事では夫が大腸がんに罹患した佐々木恵子さん(仮名/42歳・専業主婦)の事例とともに、リビングニーズ特約の重要性について、株式会社ライフヴィジョン代表取締役のCFP谷藤淳一氏が解説します。
2,000万円の保障が200万円に…“がん闘病中”の42歳夫に「死亡保険金」が出ると知らず大後悔。ほとんどの人が契約時にさりげなく付けている「特約の名前」とは【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

夫の大腸がんで支払い対象の2,000万円が200万円に

4年前夫が38歳のとき、会社の定期健康診断の便検査での精密検査で大腸がんが発覚。何度か入院・手術を繰り返すとともに長期の抗がん剤治療を受けましたが、なんとか仕事も両立しながら過ごしてきました。

 

ところが1年ほど前にがんの転移が見つかり、その後の抗がん剤治療での副作用が重くなって仕事にもかなり支障が出てきたため退職。

 

加入していた保険は死亡保障の保険2つだけだったため、治療費はすべて貯蓄から支払ってきました。夫が退職後数ヵ月して貯蓄にもゆとりがなくなってきたため、佐々木さんが派遣社員で事務の仕事につきましたが夫と同レベルの収入を得ることは難しく、家計は毎月赤字の状態に。

 

保険料負担の大きい終身保険を解約

夫の収入がなくなった分佐々木さんが仕事につくとともに家計を節約して過ごしてきましたが、いよいよ貯蓄も底をつき始めてきました。

 

ちょうどそのころ夫が体調を崩し再入院。2週間ほど療養したときに佐々木さんは主治医から別室に呼ばれ、夫のことについてこれ以上治療方法がないため退院し在宅医療に移行すること、そして夫の状態について「3ヵ月くらいで」と覚悟することを伝えられました。

 

夫が在宅医療となり仕事と家事、そして夫の看病が重なり肉体的、精神的にもゆとりがなくなっていた佐々木さん。また夫の看病で仕事も休みがちになり佐々木さんの収入が減少、家計状況もかなり厳しくなってきました。お金のことでどうしたらよいかわからなくなり相談をしたかったのですが、夫の友人でFPでもあった生命保険の担当者は数年前に保険会社を退職していました。

 

限られた知識のなかで検討した結果、やはり生命保険の保険料負担が厳しいという結論に。こういった状況で生命保険を解約することはとても複雑な心境でしたが、夫と相談し掛け捨てで3,000万円の保障がある定期保険はそのまま残し、毎月約5万円の保険料負担の終身保険は解約することにしました。終身保険は貯蓄型保険のため、解約時に約200万円の払戻金(解約返戻金)があり、当座の生活費などで助かりました。