結婚を機に死亡保険に加入した、という人も少なくないでしょう。その死亡保険に死亡時以外の保障が付帯されていることが多いことをご存じでしょうか。本記事では夫が大腸がんに罹患した佐々木恵子さん(仮名/42歳・専業主婦)の事例とともに、リビングニーズ特約の重要性について、株式会社ライフヴィジョン代表取締役のCFP谷藤淳一氏が解説します。
2,000万円の保障が200万円に…“がん闘病中”の42歳夫に「死亡保険金」が出ると知らず大後悔。ほとんどの人が契約時にさりげなく付けている「特約の名前」とは【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

解約後に知ったリビングニーズ特約

夫はがんの辛さに耐えていたものの徐々に病状は悪化、3ヵ月前にかえらぬ人となりました。最愛の夫を亡くし佐々木さんは深く落ち込んでいましたが、ようやく最近前を向いていこうという心境に。そして手付かずであった夫の遺品整理を始めたところ数ヵ月前に解約した生命保険の資料が出てきました。

 

「この保険の払戻金で助かった」などと思い起こしながらなんとなく資料の束の一番上にあった契約概要に記載された『リビングニーズ特約』という文字が目に入りました。そこには『余命6ヵ月以内と診断された場合にご希望により死亡保険金の一部または全部にかえて保険金をお支払いする』と説明書きが。そして生命保険の契約手続き時、担当者からそんな説明もあったような気がします。

 

そして夫の入院時主治医に別室に呼ばれた際、余命3ヵ月という言葉があった記憶が。当時は信じたくなかったし、実際には余命を超えて生きる人もいることを聞き、余命のことは気にしないようにしていました。

 

インターネットで『リビングニーズ特約』と検索して説明を見てみると、まさに今回のようなケースで使えるものだということが判明。しかも最高3,000万円までとあるので解約した終身保険2,000万円が事前に受け取れたということ。そして使える特約を使わずに早まって解約し、200万円少々の払戻金を受け取ったことを深く後悔することになりました。

がんでは特に重要なリビングニーズ

生命保険文化センターの2022年度「生活保障に関する調査」によると、日本に暮らす人の生命保険加入率は約8割といわれていますが、リビングニーズ特約の存在を認識している人の割合はそこまで高くないかもしれません。

 

リビングニーズ特約とは、

 

死亡保険に付帯することができる特約で、医師から余命6ヵ月と診断を受けた場合、本来死亡してから家族が受け取る保険金を、生前に受け取ることができる

 

という内容で、死亡保険には無料で自動的に付帯されていることがほとんどで、主なメリット・デメリットは以下のとおりです。

 

【メリット】

・使い道自由

・6ヵ月以上生存しても返還の必要無し

・非課税

 

【デメリット】

・本人に余命がわかってしまう

・死亡時の保障は少なくなる(なくなる)