亡くなった人が不動産を所有していた場合、不動産の名義変更が必要になります。この名義変更の手続きを「相続登記」といい、2024年4月1日から義務化されました。本記事では、Eさんの事例から不動産の相続における注意点をFP事務所・夢咲き案内人オカエリ代表の伊藤江里子氏が解説します。
「48坪の田舎の土地」を老人4人が押し付け合い。うち1人は認知症でそっとフェードアウト…毎年の固定資産税「11万円」、年金生活に痛い痛い出費【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

この先、持ち分に応じた固定資産税を負担するより処分したいが…

「ため池」は固定資産税非課税(地方税法第348条)のため、いままでNさんはなにも連絡してこなかったようですが、区画整理後に割り当てられた土地は雑種地で固定資産税もかかるし、不要なので持ち分を買い取って欲しいということも書いていました。しかし、Eさんにとってもこの土地は不要です。

 

Eさんの持ち分だけ処分したくても、他人と共有する土地なんて誰が欲しがるでしょう……。4人全員の持分をまとめて誰かに売却できるものなら、そうしたい。

 

いずれにせよ、亡くなった父の相続登記をするために(Eさんの兄姉も亡くなっているので)相続人である義姉、義兄と甥や姪、その子ども15人の協力が必要です。

 

A土地は身内だけならまだしも、他人と共有しています。ほかの共有者、Sさんの子孫の1人が残っていますが、認知症で介護施設に入居中で、家族は同じ町内に住んでいません。ほかの相続人も探してもらう必要があります。Wさんは100年以上前から名義が変わっていないので、近隣の同じ名字の子孫と思われる家に尋ねあたり、今回の事情を説明しなければなりせん。一体何人の相続人がいるのか、協力してくれるのか……。

 

手続きしなければ、この先ずっと固定資産税を払い続けることになります。相続人の調査、(相続人がいないとき、相続財産管理人選任)を弁護士に依頼する場合費用もかかります。

 

認知症のため後見人選任が必要だから、とみんなが協力してくれるかどうかはわかりません。事情を知ったEさんの家族も、自分達の代までこの問題を遺さないで欲しいとのことで、どうすればよいのか、労力と費用を考えると気が遠くなってしまったそうです。

不動産登記とは?

そもそも、不動産登記とは、土地や建物などの不動産の所有権や権利関係を公的な記録として登録し、不動産取引の安全に、円滑に行うための役割を果たしています。

 

登記簿に記載されている事項

 

表題部(表示に関する登記)の記録事項

土地……所在、地番、地目(土地の現況)、地積(土地の面積)など

建物……所在、地番、家屋番号、種類、構造、床面積など

マンションなどの区分建物については、その建物の敷地に関する権利(敷地権)

 

権利部(甲区)の記録事項 所有者に関する事項

所有者は誰で、いつ、どんな原因(売買・相続など)で所有権を取得したか、など

(所有権移転登記、所有権に関する仮登記、差押え、仮処分など)

 

権利部(乙区)の記録事項 所有権以外の権利に関する事項

住宅ローンを利用した際などの抵当権設定、地上権設定、地役権設定など

 

誰でも法務局に行って手数料を払い「登記事項証明書」を取得すれば、どこの誰がどんな理由でここを取得したということがわかります。また、オンライン(登記情報提供サービス)でも登記簿に記載されている事項を確認することができます。権利の登記をするかしないかは、任意です。

 

登記には「公示力」「対抗力」はあるものの「公信力」はありません。公信力とは、登記を信頼して不動産の取引をした者が、それがたとえ名義人が本当の権利者ではなくとも、規定どおりの要件のもと、その権利を取得することが承諾されることです。

 

住んでいる家を相続し、所有権が移転した場合、登録免許税(登記にかかる手数料)を負担してまで登記をする必要がないと考え、代替わりして住まなくなりそのまま放置してしまい、誰が所有者なのかわからなくなるといった問題が発生しています。