歳を重ねると、どうしても起こりがちな体の不具合。「老化現象」として放置してしまう人も少なくありませんが、実はそれは別の病気の可能性がある、高齢者専門の精神科医である和田秀樹氏は指摘します。和田氏の著書『65歳からおとずれる 老人性うつの壁』(KADOKAWA)より、詳しく見ていきましょう。
「疲れが取れない」「夜中に目を覚ます」「腰の痛み」…どれも“歳のせい”と片付けられることが多いが、医師・和田秀樹氏が指摘する〈意外な病気〉の可能性
頭痛、肩こり、不安感にも「抗うつ薬」が効く
セロトニンが足りなくなると、うつ病の症状でよく見られる、意欲低下や不眠などが現れることがよく知られていますが、その他に、「疲労感が取れない」「不安感が強くなる」「イライラする」「痛み刺激に敏感になる」というような症状も生じます。
高齢者のうつ病の場合、これらの一般的な症状の他に頭痛や肩こりなど身体的な訴えが多くなります。また、病気をすることや認知症になること、泥棒に入られることなど、いろいろなことにものすごく不安を感じるといった人が少なくありません。泥棒に入られる不安が強過ぎるためか、本当にものを盗られたという被害妄想に陥る人もいるほどです。
また、イライラして怒りっぽくなる人もいます。うつ病の薬が効くと、こういった症状がかなり改善します。「疲れが取れない」「夜中に目を覚ます」「腰が痛いのが治らない」などの訴えは、“歳のせい”で片付けられることが多いのですが、もしかしたらセロトニン不足や、うつ病のせいかもしれません。
特にこれらの症状が2つ以上、ほぼ同時期から始まったのなら、その可能性は大です。なかなか治らないのであれば、精神科や心療内科で相談をして、抗うつ薬を試してみる価値があると思います。
「イライラして仕方がない」「急にキレたようになる」といったことも、抗うつ薬を試す価値のある症状です。精神安定剤や抗不安薬などで抑えようとすると、頭がボンヤリしたり、記憶力が悪くなったり、あるいは元気がなくなったりします。それよりは、脳内のセロトニンを足すような薬のほうが、高齢者の元気を保つために有効であるように思います。精神安定剤などとは逆に、記憶力が良くなることもあるのですから。
和田 秀樹
精神科医
ヒデキ・ワダ・インスティテュート 代表