私たちの生活に馴染んでいるテレビ番組。しかし、なかには「心に悪い考え方」を植え付けるような番組もあるようです。医師の和田秀樹氏は、「テレビを遠ざけることがうつ病の予防にもなる」といいます。和田氏の著書『65歳からおとずれる 老人性うつの壁』(KADOKAWA)より、詳しくみていきましょう。
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「かくあるべし思考」を植えつけるテレビは見ない
「心に悪い考え方」が身についてしまっていると、うつ病になりやすいし、うつ病になった際に治りにくくなります。また、一度治ったとしても、再発しやすいままです。「心に悪い考え方」にはいくつかあるのですが、それを遠ざけるために、テレビ、特に情報番組はなるべく見ないことをおすすめします。
テレビが心に悪い点には、4つの理由があります。
1つ目は、「かくあるべし」思考です。テレビというのは、「正義を持ち上げ、悪を許さない」というスタンスを取り続けるものです。
例えば、人気タレントや俳優が不倫をすると、その人のいい点をまったく無視して、コテンパンに叩きます。もちろん、不倫というのは道徳的に許し難いものですが、残念ながら人間には弱い点があるのも事実です。もちろん、CMなどで高額の出演料をもらっているのですから、その商品のイメージを傷つけるようなことは許されないでしょう。一般人に比べて影響力が大きいのですから、不道徳なことをすることが、人々、特に子どもに悪影響を与えることも事実でしょう。
しかし、こういう人の中にはセックス依存症という病気の人もいます。そうであれば、プロゴルファーのタイガー・ウッズのように、治療を受けさせることのほうが大切です。
「いかなるときでも聖人君子でいろ」というのは、少なくともメンタルヘルスにとってはいい考えとは思えません。人間というのは弱い生き物であるから、「かくあるべし」の通りにはいかないときもあるということが認められるかどうかで、その後の心の在り方は大きく違ってくるでしょう。
コロナ禍では、外で仲間とお酒を飲んだり、食事をしながら同僚に愚痴を聞いてもらったりといったある種のストレス発散をしようとすると、スマートフォンで写真や動画を撮られ、それがSNSで流され、コテンパンに叩かれるといったことが多々ありましたが、テレビのコメンテーターたちは、映された側の事情を一切鑑みることなく、「不謹慎だ」という発言一色でした。
あるいは、一人の高齢者が交通事故を起こすと、他の年代の人が事故を起こしていることを顧みることなく、「免許を返納しない高齢者は不道徳である」というような圧力がかかったこともあります。
このような「かくあるべし」思考が、テレビを見るうちに刷り込まれてしまうのです。