セロトニンを増やす「8つの習慣」を心がける

高齢者の場合、それまでうつ病になったことのない人が、年齢を重ねてから発症することは珍しくありません。しかし、「薬で治ることが多い」という意味では、必要以上に恐れることのない病気ともいえます。とはいえ、なかには薬がよく効かない人も1〜2割はいますし、なったときの苦しさは経験した人しか分からないという話も、医師としてよく聞きます。私自身、高齢者になった際に、最もなりたくない病気の1つがうつ病です。

ということで、やはりならないに越したことがない病気ですし、認知症と違い、予防法がないわけではありません。完全に予防できる病気というわけではありませんが、動脈硬化よりは高い確率で予防できます。

予防策の1つ目は、セロトニンを減らさない、できれば増やす生活を心がけることです。

①食品でセロトニンの材料を摂るようにする

まずは、食生活です。セロトニンの材料は、トリプトファンという必須アミノ酸です。必須アミノ酸というのは、自分の身体の中で作ることができないので、体外から十分摂らないと不足してしまいます。トリプトファンは、通常のたんぱく質にも十分含まれるものですが、とりわけたくさん含まれているのが、かずのこ、鶏卵の卵白、かつお節、大豆製品、乳製品(無脂肪ヨーグルトを除く)、レバー、ナッツ類などです。

ということで、これらの食品をたくさん食べると、セロトニンが増えてうつ病の予防になるし、不安な気分も楽になる、イライラしにくくなるということになります。ただ、残念なことに、これらの食品を食べることで血液中のセロトニンは増えますが、脳には血液脳関門というものがあり、血液中のセロトニンがそのまま脳に移行するわけではありません。もちろん、血液中のセロトニンが多いほうが、脳に行き渡る可能性は高いと考えられますが、それだけでうつ病を予防するのは困難です。

一方、血液中のセロトニン濃度が低い場合は、どうしても脳内のセロトニン不足が起こりやすく、うつ病になりやすいということは確かなようです。

ということで、食べ物でセロトニンを増やす、つまりトリプトファンの多い食事を摂るのは、賢明なことだと思います。

②コレステロールは高めのほうがいい

さまざまな調査では、血中のコレステロール値が高い人のほうがうつ病になりにくいことが分かっています。また、うつ病になった際も治りやすいのです。その理由として、コレステロールが、セロトニンを脳内へと運ぶ働きをしているからではないかと考えられています。また、コレステロールは、男性ホルモンや女性ホルモンの材料になり、老化を遅らせる働きがあります。免疫細胞の細胞膜の材料でもあり、コレステロール値が高い人のほうが、免疫機能が高く、がんになりにくいことも知られています。

一方で、コレステロールが多過ぎると、動脈硬化を引き起こすリスクが高まるのも確かです。また、コレステロール値の高い人のほうが心筋梗塞になりやすいという調査結果もあり、コレステロールは何かと悪者にされがちです。しかし、欧米のように、心臓病が死因のトップクラスの国はともかくとして、日本のように、がんで死ぬ人が心筋梗塞で死ぬ人の10倍以上いる国では、コレステロール値は高いほうが望ましいと考えられます。

そう考えると、うつ病の予防のためには、むしろコレステロール値が高めのほうがいいというのも受け入れやすいと思います。セロトニンを増やすだけであれば、大豆などが健康的に思われるかもしれませんが、コレステロールも一緒に増やしたいなら、肉類や乳製品のほうが、うつ病予防に効果的な食品といえるでしょう。