高齢者が免許を返納しないのは「老害」なのか?

「お父さん、そろそろ免許を返納してはいかがですか?」と息子や娘から言われたことはありませんか。

親族の免許返納(運転免許の自主返納)について考えたことがあるかどうかを尋ねる調査によると、約半数の47%が「ある」と回答しています。その際、免許返納すべき親族の年齢は、「76〜80歳」が29%、次いで「71〜75歳」が27%となっています(駐車場やレンタカーなどのサービスを提供するパーク24株式会社の調査より)。

自分はまだ運転に自信があるのに、「免許返納しては?」と言われたらムッとしますね。でもそれを素直に聞き入れず、「まだ運転を続けたい」と言えば、「親父、それって老害だよ」と叱責されるかもしれません。それが嫌で、渋々免許を返納してしまう高齢者も多いのではないかと思います。

高齢者に免許返納を促す理由の1つが、認知機能の低下。すでに75歳以上のドライバーには、免許更新時に認知機能検査を行うことが義務づけられています。

さらに2022年5月からは、一定の違反歴がある75歳以上のドライバーに対し、免許更新時に運転技能検査が義務づけられました。試験コースを運転して安全運転ができるかどうかを判定する試験ですが、これを受けて70点以上(100点満点)取って合格しなければ更新は認められなくなりました(一種免許の場合)。

このように、免許返納の外堀は着々と埋められています。なぜ高齢者だけが、免許更新のとき、これほどまでに高いハードルを課せられなければならないのでしょうか?

追い打ちをかけるように、マスコミが「高齢者の運転は危ない」というキャンペーンをはっています。

特にひどいのがテレビのワイドショーですが、高齢者がアクセルとブレーキの踏み間違いなどで事故を起こすと、「それみたことか。高齢者の運転はやっぱり危ないでしょ」と言わんばかりのニュアンスのコメントをたれ流しています。

人身事故でも起こそうものなら、「こんな爺に運転させるなんて狂気の沙汰」くらいの激しい言い方をして、高齢者の免許返納を煽っています。

テレビの影響力というのは大きいですから、まだ運転できると思っている高齢者も、こんな番組を見せられたら、「俺もそろそろ返納したほうがいいのかな?」と思ってしまうに違いありません。