年をとるにつれて「年をとったら粗食で十分だし、そのほうが体によい」と、あっさりした食生活に切り替える人は多いでしょう。しかし、『老害の壁』(エクスナレッジ)の著者・和田秀樹氏高齢者は、これを「迷信」と切り捨てます。和田氏が掲げる70代以降の“理想の食生活”について、詳しくみていきましょう。
高齢者こそ、肉を食え…70代以降は「メタボのほうが長生き」な理由【東大卒の医師・和田秀樹が熱弁】
“年をとったら粗食で十分”は「迷信」
高齢者の多くは深刻な「たんぱく質不足」
高齢になると、「あんまり動かないから、カロリーはそんなにとらなくてよい」とか、「年をとると肉がそれほど食べたくなくなる」と考える人が多くなるようです。実際、そう感じている人もいるかもしれません。でも、そういう食事に慣れてしまうと、栄養不足に陥ってしまいます。
「今の時代に栄養不足なんてあるの?」と思われるかもしれませんが、高齢者の栄養不足というのは実際に起こっているのです。私たちが生きていくために必要な栄養素のうち、炭水化物(糖質)、脂質、たんぱく質は、3大栄養素と呼ばれています。しかし、多くの高齢者はたんぱく質が不足しています。
たんぱく質は筋肉の材料になる栄養素でもあるので、足りなくなると筋肉が減少します。しかも、高齢になると筋肉が減りやすくなるので、若いときよりもたんぱく質をとらなければならないのです。
70代の人に必要な1日のたんぱく質の量は、体重1kgあたり1〜1.2gとされています。体重50kgの人なら50~60g。豚バラ肉100gに含まれるたんぱく質量は14gとされているので、豚バラ肉だけでたんぱく質をとろうとするなら、毎日350~450gくらい食べなくてはならないということになります。
もちろん、たんぱく質は魚や卵、豆腐などの大豆加工品にも含まれていますが、ここで言いたいことは、高齢者は意外にたんぱく質がとれていないということです。
「年をとったら粗食で十分だし、そのほうが体によい」という「迷信」を信じてはいけません。
どうしてこんな迷信がはびこったのかわかりませんが、日本の高齢者は、朝食はごはんとみそ汁と漬けものだけ、昼食はそばかうどん、夜も「アジの干物でもあれば満足」といった食生活をしている人が多いのではないでしょうか。これでは明らかにたんぱく質が不足します。
また、体を動かすためのエネルギー(カロリー)は、油(脂質)やごはん(糖質)などでとらないといけません。
高齢者は脂っこいものは体によくないと思っている人が多いのですが、これも迷信です。ごはんもあまり食べない人が多いので、高齢者はカロリー不足も深刻です。