週刊誌などでは、たびたび薬や健康食品についての特集が組まれています。そこでは、特定の薬について「この薬は危険」「飲んではいけない」などと謳われています。しかし、東大卒の医師で『老害の壁』(エクスナレッジ)の著者・和田秀樹氏は、こうした特集の信ぴょう性に疑問符がつくといいます。その根拠について、詳しくみていきましょう。
学会の“怪しいウワサ”…医学部教授という肩書きが「信用ならない」ワケ【東大卒医師・和田秀樹が暴露】
「うつ病」の薬と「骨粗しょう症」の薬、どちらが本当に安全か
高齢者がちょっと転んだだけでも骨折してしまうのは、高齢になると骨粗しょう症という病気になる人が増えてくるからです。骨粗しょう症は骨が脆くなって折れやすくなる病気です。
実は、骨粗しょう症の薬の中には、強い副作用が出るものがあります。ところが、そのことはほぼ問題とされていません。
週刊誌がよく、高齢者に危ない薬の特集をしていますが、その元ネタの1つになっている『高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015』があります。現在はインターネットでダウンロードすることもできます。
このガイドラインには、「中止を考慮すべき薬物」としてたくさんの薬が掲載されているのですが、私がかなり有効だと感じているうつ病の薬が多数含まれています。
精神科医の立場からすると、高齢者のうつ病はなるべく治療したほうがよいのに、高齢者のうつ病の薬は、「副作用が多くみられるため使用はできるだけ控える」などと書かれ、危ない薬とされています。
しかし、その一方で、骨粗しょう症の薬に関しては、「特に慎重に投与を必要とする薬物のリスト なし。」「開始を考慮するべき薬物のリスト なし。」などと書かれています。まるで、骨粗しょう症の薬ほど安全な薬はないかのような書き方です。
骨粗しょう症の薬は短期的には骨量を増やす効果が認められるものの、長期にわたって使用することで骨折を減らしたという話を私は聞いたことがありません。
しかも骨粗しょう症の薬は、吐き気や食欲不振などの副作用が非常に多く、投与された半分くらいの人が栄養障害を起こし、かえって骨を弱くして骨折している人も多いのです。
こんな薬を安全だといって、高齢者向けの薬のガイドラインに載せているのは、どうしてなのでしょうか。