マスコミによって報道される高齢者の交通事故。「免許返納」を促す言説が飛び交うばかりですが、はたして鵜呑みにしてよいのでしょうか。精神科医である和田秀樹氏の著書『老害の壁』(エクスナレッジ)より、「高齢者の運転=危険」の印象を世間に植え付けた人たちの正体について、和田氏の見解をみていきます。
おっせえなあ!…「高齢者の運転=危険」の印象を世間に植え付けた“高級外車ドライバー”たちの正体【東大医学部卒の医師の見解】
「高齢者マーク」をつけた車は安全運転
私も運転をするのでわかりますが、高齢者マーク(高齢運転者標識)をつけている車は基本的に安全運転しているように思えます。
高齢者マークとは、70歳以上のドライバーに推奨されているマークで、幸せを運ぶという意味合いで四つ葉のクローバーをデザインしたものだそうです。でも私には四つ葉のクローバーには見えないので、マークの意図が十分に理解されていないのかもしれません。
いずれにしても、あのマークをつけたドライバーが高齢者であるのは間違いありません。その運転ぶりを観察すると、ほとんどの人は法定速度を守った安全運転を心がけています。こういう運転なら事故はめったに起こらないような気がします。
それに、高齢者マークをつけている車は、前後を走る車に、「高齢者が運転していますよ」というメッセージを発しているのですから、前後の車は高齢ドライバーが安全運転できるように、十分な車間をとるなど、気を配らないといけません。
道路交通法(第71条第5の4号等)にも、「高齢運転者標識を付けた普通自動車に危険防止のためやむを得ない場合を除き、幅寄せや割込みをした自動車運転者は処罰されます」とあります。
安全運転なのに…高齢者の“ノロノロ運転”を許せない人たち
高齢者マークをつけた車には、配慮してあげないといけないのに、車間をぐいぐい詰めたり、無理に追い越そうとしたりする車を見かけることがあります。
そんな運転をするのは、高級外車が多い印象がありますが、そんな高価な車を所有しているのは、金持ちの若い人が多いように思われます。
ここからは私の勝手な想像ですが、テレビ局で制作の仕事をしている社員には、高級外車に乗っている人がなぜか多いという印象があります。
テレビ局の制作、いわゆる現場の仕事を担うのは20〜40代くらいの若い人です。テレビ局は同年代の他の職業に比べると高収入の上、親が金持ちのことが多いと言われているので、高価な車も簡単に買えてしまうのでしょうか。
そんな高級外車のドライバーから見ると、いかに安全運転とはいえ、ゆっくり走る高齢者の車が街にあふれていることが許せないのかもしれません。
だったら、高齢者から免許を取り上げよう。免許を取り上げるために番組でキャンペーンを張ろう。そんな意図が背景にあり、高齢者が運転事故を起こすと、まるで大罪を犯したかのように報道することになったのではないでしょうか。
そんな妄想もあながち外れてはいないような気がしますが、みなさんはどう思われますか。