憲法で定められている「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する「生活保護」。厚生労働省『被保護者調査』から、生活保護者の実態を紐解いていくとともに、生活保護を受けられない母子世帯の実情をみていきます。
もう限界です…月収10万円の母子「生活保護」を受けられず、物価高で家賃滞納「これ以上、助けてと叫んでも」

生活保護が受けらえるなら、まだまし…支援を受けられず困窮するシングルマザー

母子世帯の就業率は86.3%。また働いている場合でも、正社員が49.0%と半数近くいる一方で、パート・アルバイト等は38.7%と4割近く。子どもが幼い場合、働くにしても条件が厳しく、仕方なくパート・アルバイト、というケースは多いでしょう。

 

母子世帯の年間就労収入は平均236万円。月19.6万円、手取り月16万円ほどです。厚生労働省『令和4年 賃金構造基本統計調査』によると、30代前半・パート・アルバイト(短期労働者)の平均月収は13.2万円、30代後半で12.4万円。手取りは9万~10万円程度。養育費ももらえず、収入はパート・アルバイトで薄給……生活保護に頼らざるを得ないことは一目瞭然です。

 

東京都23区在住、未就学児が1人の母子世帯の場合、生活扶助額は12万1,110円、住宅扶助基準額は6万4,000円、最低生活費は19万5,300円です。パート・アルバイトの収入が月10万円であれば、月9.5万円ほどの生活保護を受けられる可能性があります。

 

厚生労働省は原則5年に1度、生活保護を受けていない低所得世帯との不公平さをなくすために、生活保護の「生活扶助」の基準額の見直しを実施しています。そして2023年10月、基準額が改定され、現状の生活扶助費の金額は引き下げないと決定。新型コロナウイルス感染症や近年続く物価上昇による生活への影響を踏まえ、世帯1人につき月額1,000円が加算されるなどの臨時的・特例的な措置を行いました。現状は2024年度までは実施する予定で、その後は社会情勢に応じて検討するとしています。

 

また生活保護を受ける場合、貯蓄が最低生活費を下回る必要があります。5歳の男児を育てる神奈川県在住、30代のシングルマザーの場合、月収は月10万円程度しかないものの、結婚前に貯めた数十万円の貯蓄があり、現在は生活保護を受けていないといいます。

 

――子どもの将来のために貯蓄は手をつけず、残しておきたい

 

生活はとことん切り詰めているものの、昨今の物価高で余裕は1ミリもない状況。特にこの冬は子どもが風邪を引きがちで家にいることが多く、収入減に加え光熱費もいつもよりかかるというダブルパンチ。「自分の食費は簡単に節約できる部分」と、母だけ食事を我慢することもしばしばだといいます。さらに最近は家賃の支払いも遅れ気味で、大家から催促を受けることもあるとか。

 

――もうそろそろ、こんな生活も限界かも

 

貯蓄に手をつけてしまい、生活保護基準を満たしたほうがラク、と考えることもあるといいますが、まだ踏みとどまっているといいます。

 

――これ以上、助けてなんて叫んでも、誰かが助けてくれるわけじゃないし……私一人、頑張るしかない

 

生活苦に陥るシングルマザー。困窮状態にあると、社会からも孤立し、さらに困窮状態を悪化させることがあるといいます。たとえ生活保護の基準を満たしていなくても、生活保護以外のサポートがある場合も。まずは住んでいる地域の福祉事務所などに相談することが、苦境から脱するための第一歩になります。

 

[参考資料]

厚生労働省『令和4年度被保護者調査』

厚生労働省『令和3年度全国ひとり親世帯等調査』

厚生労働省『令和4年 賃金構造基本統計調査』