もともと休日に外出する習慣のない人たちは、老後、家に閉じこもるというケースは少なくないでしょう。仕事などの社会との接点を失ったあとも、人生はまだまだ長く続いていきます。本記事では、Aさんの事例とともにセカンドライフの生き方の選択肢について、FP1級の川淵ゆかり氏が解説します。
年金月5万円の80歳・激痩せした母が緊急入院…疲弊困憊のなか60歳・引きこもり定年夫からの「僕のご飯は?」→53歳・限界妻が取った〈最後の手段〉【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

増える高齢者の一人暮らし

65歳以上の者のいる世帯についてみると、令和元年現在、世帯数は2,558万4,000世帯と、右肩上がりで増えており、全世帯(5,178万5,000世帯)の約半数の49.4%を占めています。

 

また、昭和55年では世帯構造のなかで三世代世帯の割合が最も多かったことに対し、令和元年では夫婦のみの世帯に次いで単独世帯が多くなっています。
 

出所:内閣府「令和4※版高齢社会白書(全体版)」(※)
[図表]65歳以上の者のいる世帯数と構成割合 出所:内閣府「令和4※版高齢社会白書(全体版)」(※)

実家に帰ると…母の姿に衝撃

夫との関係に疲れ切ったAさんは、自分自身の気分転換も兼ねて母親の様子を見に3日ほど実家に帰る決心をします。

 

Aさんの実家は海に近く、懐かしい潮の香りをかぐだけで心が洗われそうです。

 

家に帰る道中、ストレスの半分もすでに解消したようなAさんでしたが、実家に着くと驚くべき光景を目にします。この家は古く、昼間も電気を付けないと暗くて仕方がないのですが、電気もつけず暗い部屋の中で母親は布団を敷いて寝ているのです。

 

Aさんは「お母さん、どうしたの!?」と駆け寄りますが、さらにやせ細ったような母親は「おなかが痛い」と言って動こうとしません。すぐにタクシーを呼んで病院に連れて行くと、食が細いことで便秘が続いていたようで、そのために腹痛を起こしていたようでした。

 

落ち着いた母親に話を聞くと、「食欲がない」「電気代も高くなったから電気もテレビも付けないようにしていた」と言います。

 

Aさんの父親は自営業だったため遺族年金はなく、母親の年金額も月に5万円程度です。節約のために一人で暗い家の中で過ごしていたかと思うと、母親が不憫になってしまいました。

 

母親は1週間ほど入院することになり、Aさんはそばに付いていることにしました。夫に電話をすると「僕のご飯はどうするの?」と、信じられない言葉が返ってきました。めったに怒らないAさんでしたが、これには激怒。「それなら、あなたもこっちに来なさいよ!」