もともと休日に外出する習慣のない人たちは、老後、家に閉じこもるというケースは少なくないでしょう。仕事などの社会との接点を失ったあとも、人生はまだまだ長く続いていきます。本記事では、Aさんの事例とともにセカンドライフの生き方の選択肢について、FP1級の川淵ゆかり氏が解説します。
年金月5万円の80歳・激痩せした母が緊急入院…疲弊困憊のなか60歳・引きこもり定年夫からの「僕のご飯は?」→53歳・限界妻が取った〈最後の手段〉【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

引きこもりの定年夫と暮らすパート勤めの妻

Aさんはコンビニで働く53歳の元気な女性です。60歳の定年まで勤め上げたご主人と住宅ローンを完済したマンションに二人で暮らしています。息子が一人いますが、就職後は一人暮らしを希望して出て行ってしまいました。

 

夫はこれまでのストレスから、定年のタイミングで働くことをやめてしまい、もともと息子が使っていた部屋に引きこもるようになります。最近では夫婦の会話もほとんどなくなってしまいました。「散歩にでも出たら?」と声をかけても返事もありません。

 

Aさん自身のパート収入はそれほど大きなものではありませんが、息子も独立したうえ、夫の退職金などの貯蓄もあるため、いまのところは生活に困ることはありません。ですが、一番心配なのは夫の精神状態です。それでも食事はちゃんと摂っているので、病院に連れていくべきかどうか悩ましいところです。

 

ストレスが限界に近づく妻

明るいAさんですが、仕事から帰ってきても住まいの雰囲気は暗く、疲れた体で食事の用意をして、どんよりとした目の夫と向かい合って食事をする毎日です。そのうち、仕事から帰宅して玄関のドアを開けるたびに、ため息をつくようになってきました。

 

「このままだと私もダメになるわ」

 

さて、Aさんの実家は海の近くにあり、80歳の母親が一人で住んでいます。Aさんには都内のマンションに住む兄が一人いますが、父親が亡くなってからどんなに兄夫婦が母親に同居を持ちかけても「マンションには住みたくない」の一点張りで一人暮らしを続けていました。

 

老人ホームに入れることも兄妹で考えましたが、「一人で生活できるのに、なぜ老人ホームに入らないといけないの?」と頑として言うことを聞きません。母親は年を重ねるごとにますます頑固になっていくようです。

 

ときどき、Aさんと義姉が交代で様子を見に行っているのですが、そんな母親も会うたびに痩せているような気がします。