日本が30年もの間、失い続けた3つの理由
なぜ日本は30年も失い続けたのか。専門家はさまざまな理由をあげていますが、それらを整理すると、大きく理由は3つ。
1つ目の理由は、やはり「バブル崩壊の痛手」。バブル崩壊後の90年代半ばには、金融機関全体の不良債権額は数十兆円にも達し、金融機関が企業に融資する力は急激に衰えました。お金を借りられない企業は、成長のための投資をピタッとやめ守りの経営に徹します。それにより需要減→物価下落という悪循環が続いていく……いわゆるデフレ経済に陥ったわけです。
ちなみにデフレ経済とはいっても、この30年の間にあらゆるものの値段が下がったかといえば、そういうわけではありません。2020年の消費者物価指数を100とした際、1993年の食パン6枚切りの価格は216円。それが2023年には292円と28.6%増。同じようにカップ麺は31.9%、ポテトチップスは59.4%……昨今の物価高もあり、軒並み価格は上昇しています(関連記事:『【早見表】30年前と現在を比べたらヤバすぎる!30年前と給与と物価を比較』)。
この30年で価格が下がったものといえば、携帯電話代(30年前の価格と比較し79.4%)や、インターネット接続料(30年前の価格と比較し55.5%)など、デジタル関連のもの。社会が急激にデジタル化するなかで、価格も一気に下がりました。
2つ目の理由は人口減。日本の総人口は2005年に戦後初めて前年を下回り、2008年にはピークに達し、2011年以降は減少の一途を辿っています。またその減少幅も次第に大きくなっています。人口減は経済成長にマイナスに作用します。
3つ目の理由が「デジタル革命への対応」。1990年代に入ると、世界では驚異的なスピードでデジタル革命が進みました。マイクロソフトがPCの基本ソフトで席巻すると、アマゾン、グーグル、フェイスブック(現メタ)が創業。アップルがスマートフォンでライフスタイルを一変させ、米国企業がプラットフォーマーの座を独占しました。このとき、日本は成長への投資を行わず、守りに徹した結果、いまや世界において日本企業の存在感は見る影もありません。
平成元年、世界の時価総額ランキングをみていくと、1位「日本興業銀行」2位「住友銀行」3位「第一勧業銀行」4位「富士銀行」と、4位までが日本企業。さらに6位「東京電力」9位「トヨタ自動車」10位「野村証券」と、トップ10のうち7社が日本企業。さらにトップ20社まで広げても、13社が日本企業。それが平成の終わりには、トップ20位に日本企業の姿はなく、44位の「トヨタ自動車」がランクインするだけです。
現在、日本では物価が上昇し、さらに大企業の賃金はそれを上回ろうとしています。「失われた30年が、失われた40年になる」とささやかれていましたが、大きく状況は変わろうとしています。このまま好循環に入ることができるかどうか。そのカギのひとつとされているのが、大企業の賃上げが中小企業にまで波及するかどうか。いまのところ、賃上げは大企業中心であり、その効果は限定的だというのが多くの専門家の見方。賃上げの動きが中小企業にまで及べば、好循環が生まれる可能性は高まるといえます。
厚生労働省『毎月勤労統計調査』の令和6年1月分結果速報によると、以前として賃上げ上昇分が物価上昇を上回ることができず、実質賃金は22ヵ月減少。しかし減少幅は着実に縮小しているといいます。好循環が生まれる瞬間は近い……そう、願わずにはいられません。
[参考資料]