国家公務員といえば、超がつくほどエリートで「生涯安泰」というイメージが強いですが、昨今はそんな神話も崩壊してしまったといわれています。国家公務員たちの老後の実態とは? 人事院の資料から紐解いていきます。
月収41万円、退職金2,100万円…〈定年退職したら悠々自適な老後〉の幻想「元エリート国家公務員」でも生活困窮の実態

国家公務員の老後…定年後も「生活のために働きたい」の現実

国家公務員であれば、定年とともに現役を引退。十分な退職金ももらい、悠々自適な老後を過ごせる……そんな将来を思い描くでしょうが、実際はそうではないようです。人事院が定年退職した国家公務員を対象に行った『令和5年 退職公務員生活状況調査報告書』で、国家公務員の老後についてみていきましょう。

 

まず、そもそも「定年後に働きたいと思ったか」を尋ねると、8割以上も現役続行を望み、その理由の多くが「生活のため」というのが現状でした。

 

Q.定年退職後も働きたいと思ったか?

・はい…83.3%

・いいえ…16.4%

 

Q.定年後も働きたいと思った理由は?

・日々の生計維持のために必要…85.7%

・社会との接点や生活の張り・ 生きがいを持ちたい…44.0%

・経済的により豊かな生活を送りたい…38.1%

・仕事を通じて社会や職場に貢献したい…34.4%

・健康維持のために必要…31.4%

・資格・技術を活用したい…9.7%

 

そして現在の就労状況を尋ねると、9割弱が就労中。また「定年後は働きたくない」と思った人でも半数以上が働いています。

 

Q.収入を伴う仕事をしているか?

・仕事をしている…87.6%

・仕事をしていない…12.0%

■定年後も働きたいと思った人

・仕事をしている…94.5%

・仕事をしていない…5.4%

■定年後は働きたくないと思った人

・仕事をしている…54.1%

・仕事をしていない…45.7%

 

現在の本人の平均収入額を聞いてみると一番のボリュームゾーンは「21万~30万円」で26.3%。また住居のスタイルは「持ち家でローン完済済み」が56.6%と半数を超える一方で、「持ち家でローン返済中」が24.3%と、4人に1人の水準でした。

 

Q.本人の平均収入額は?

・10万円以下…9.5%

・11万~20万円…14.9%

・21万~30万円…26.3%

・31万~40万円…10.9%

・41万~50万円…4.0%

・51万円以上…3.8%

 

Q.現在の住まいは?

・持ち家(ローン完済)…56.6%

・持ち家(ローン返済中)…24.3%

・賃貸(公営/民間)…10.1%

・公務員宿舎…6.0%

 

さらに現在の家計の状況をたずねると、赤字になることがあるのが4割。また2割弱が「常に赤字で生活が苦しい」と回答しています。

 

Q.世帯の家計の状況は?

・十分ゆとりがある…3.7%

・いくらかゆとりがある…14.3%

・ゆとりはないが赤字でもない…38.8%

・毎月のやりくりに苦労し、時々赤字になる…23.3%

・常に赤字で生活が苦しい…18.2%

 

このようにみていくと、国家公務員だったからといって誰もが悠々自適な老後を送れるとは限らない、厳しい現実がみえてきました。

 

――老後、年金だけでは生活していけませんよ

 

老後2,000万円問題に端を発して、自助努力が叫ばれるようになってから5年ほど。昨今は新NISAのスタートで資産形成への関心がいっそう高まっています。生涯安泰とされていた国家公務員も例外ではありません。コツコツと資産形成を進めていかなければ、老後崩壊に直面する可能性は十分にあるのです。

 

[参考資料]

人事院『令和5年国家公務員給与等実態調査』

内閣官房内閣人事局 『国家公務員の給与(令和5年版)』

内閣官房内閣人事局『退職手当の支給状況』

厚生労働省『令和5年就労条件総合調査』

一般社団法人 日本経済団体連合会『2021年9月度 退職金・年金に関する実態調査』

人事院『令和5年 退職公務員生活状況調査報告書』