〈前妻との子〉との相続トラブルで〈後妻〉が直面する「家なしリスク」
このように、相続の場では「後妻と前妻の子」という関係のなかでトラブルになりがち。ドラマのような展開が実際に繰り広げられることも珍しくはありません。そして本当に家を売らないといけない事態になった場合、特に後妻が高齢者であれば、かなり厄介な事態に直面します。
――家を借りようと思ったけど、全然、貸してくれない
――住む家もないのに……これから、どう生きていけばいいの
株式会社R65が行った『65歳以上が賃貸住宅を借りにくい問題に関する実態調査』によると、「年齢を理由に不動産会社に入居を断られた経験はありますか?」の問いに対して、26.8%が「ある」と回答。断られた回数は「1回」が最多ですが、「5回以上」も11.9%。遺産分割により自宅を売ることになった際には、「家なしリスク」に直面する可能性があるのです。
そもそも相続が発生した場合、遺言書がなければ「遺産分割協議」をもって遺産の分け方を決めます。この遺産分割協議に参加できるのは「法定相続人」だけです。法定相続人とは民法で相続人となることができると定められた相続人のこと。具体的には以下のような人たちです。
・法定相続人には、配偶者と血族の2種類があります。
・配偶者は、常に相続人となります。
・血族には順位がついており、先順位の者が相続人となります。
・第1順位は、被相続人の子です。子が死亡しているときは、その代襲者(子、孫、ひ孫等)です。
・第2順位は、直系尊属(被相続人の親等)です。
・第3順位は、被相続人の兄弟姉妹です。兄弟姉妹が死亡しているときは、その代襲者(子のみに限られ、孫、ひ孫等は含まれません)です。
前妻は法定相続人になれませんが、血のつながりのある子は「法定相続人」になることができます。また遺言による指定がないときには「法定相続分」が基準となり、配偶者も子も遺産の1/2が取り分。ただし子が複数いれば、その人数で法定相続分を均分します。
前出の例では子は1人。つまり遺産の半分を主張できる権利があるということになり、後妻が住む家についても「半分よこせ!」と堂々と主張できるということになります。
遺言をもって事例のようなトラブルを避けることはできますが、その際に気を付けるべきは「遺留分」。これは、相続人が生活に困らないように、最低限の財産は必ず相続できるように保障されている権利で、法定相続分の半分を主張できます。遺言を作成する際には、この遺留分を侵害しないよう配慮が必要です。もし遺留分の侵害が発生したら、間に弁護士を入れることが一般的で、遺留分に達するまでの遺産の受け渡しなどを行うことになります。
前妻の子が関わる相続は、残された家族に負担になるケースが多く、遺言書作成など、早めの対策が肝心です。
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