年収が高く、携帯料金等の延滞なし、カードローンなどの借り入れもなし……。住宅ローン審査になんの問題もないように思えても、思わぬ原因で審査に落ちるケースがあるといいます。一体どんな理由でしょうか? 本記事では、Aさんの事例とともに住宅ローン審査を通過するために注意すべきポイントについて、FP1級の川淵ゆかり氏が解説します。
不動産業者「誠に申し上げにくいのですが、融資できません」…世帯年収1,700万円の30代共働き夫婦、住宅ローン審査“謝絶”の真相に愕然…原因は学生時代の〈ある決断〉【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

ほかの銀行でも…審査に落ち続けた原因は

さて、Aさんの話に戻ります。

 

Aさんはあきらめず、ほかの銀行でも審査に挑みますが、そこでもまた落ちてしまいました。

 

十分な収入があるのにと、納得できないAさんですが、落ち続ける原因は、過去の奨学金の返済に問題があったようです。Aさんが大学に入るころ、Aさんの実家の経済状況はひっ迫していました。Aさんを大学進学させる余裕はなかったため、Aさんは奨学金を借りて、大学へ入学することを決めたのです。

 

いまでこそAさんは成功を収めて高収入ですが、大学入学直後に新卒で入社した会社は倒産してしまい、数ヵ月間は仕事も就けずに友達の家を転々として奨学金の返済が滞った時期があったようです。

 

奨学金は3ヵ月滞納が続くと個人信用情報機関(ブラックリスト)に登録されます。ブラックリストに登録されると、カードを作れない、ローンが組めない、といった問題が出てきます。一度ブラックリストに登録されると、「返還完了の5年後までブラックリストの載る」ことになるため注意しましょう。

 

「返還完了」というのは、滞納を解消した時点ではなく、すべての返済を終えたことをあらわします。つまり、無事に奨学金を完済したとしても、そこからさらに5年間ブラックリストへの掲載は続くことになります。

 

ですから、Aさんがいま、たとえ一括で奨学金が返済できたとしても、あと5年は待たないと住宅ローンを組むことは難しくなる、ということになります。

 

奨学金を深く考えずに借りてしまう家庭も多いですが、子ども自身が借主になる奨学金は子どもの将来を考えると避けたほうがよく、どうしても資金不足になる場合は、親が借主になる教育ローンなどを検討するようにしましょう。
 

 

川淵 ゆかり

川淵ゆかり事務所

代表