十分な退職金、十分な年金、十分な貯蓄……「老後にお金の不安なし!」と準備万端だったはずが、なぜか苦境に陥るケースも珍しいことではありません。老後を崩壊させるきっかけとなる、想定外の出来事とは?
退職金「1,500万円」、年金「月17万円」でも…元大卒サラリーマンの老後を崩壊させる「3つのまさか」

十分な備えがあっても…老後崩壊を招く、3つの想定外な出来事

平均的な退職金を手にし、平均的な年金ももらえる。老後を見据えた蓄えもきちんとある。3つ揃っていれば、老後の安泰は確約されたといってもいいでしょうか。しかし、何事にも“絶対”ということがないように、安泰かと思われた老後を崩壊させる出来事が……。

 

①老後崩壊を招く出来事「年金減額」

令和6年度の年金額は前年度に比べて2.7%引き上げられたものの、物価高の分を上回ることはできず、実質減額となりました。

 

そもそも公的年金には、給付と負担のバランスを自動的に調整する仕組みがあり、おおむね5年ごとに、財政検証という、最新の人口や経済の状況を反映した長期にわたる財政収支の見通しを作成しています。前回2019年には、2040年代に年金は2割目減りすることが示されました。

 

しかし昨今、少子化が想定以上のスピードで進んでいることは、ニュースで伝えられているとおり。年金2割目減りはもとより、それ以上の減額も考えられるでしょう。いまの水準で将来の年金額を見据えていると、年金の目減りに耐えられなくなり、一気に生活は破綻することになります。

 

②老後崩壊を招く出来事「医療費・介護費の負担増」

年を重ねていけば健康リスクは高まり、それまで病院知らずの人でも通院する機会は増えていくでしょう。高額療養費制度などもあり負担額はそれほどではないとはいえ、現役時代と比べるとはるかに出費は増加。家計をじわりじわりと圧迫します。

 

また後期高齢者の医療費の窓口負担割合が見直しになったように、負担額・負担率は、今後も現行通りとは限りません。いまの現役世代が高齢者になったとき、現行通りの負担で済むのかはあまりに不透明です。

 

③老後崩壊を招く出来事「住宅ローン返済」

昨今、晩婚化などに伴い、ライフステージは少しずつ後ろ倒しに。それに伴い、住宅購入年齢や、住宅ローンの完済予定年齢も上昇し、住宅ローンから解放されるのは70代というのも珍しいことではなくなりました。ただ住まいはローン完済すればそれで終わりというわけではなく、定期的に修繕が必要に。ローンの返済期間は30年程度ですが、完済前に、大規模な修繕が必要になるタイミングが訪れます。再びローンを活用すれば、老後ににも関わらず、返済額がどんと増える可能性も。安泰だと思っていた老後は、ローン負担の拡大で一気に苦しくなります。

 

 

2019年に勃発した「老後資金2,000万円問題」。高齢者夫婦の場合、老後に「年金+2,000万円が必要」というものですが、これはあくまでも現在の水準で考えたときの話。現役世代が老後になったときに、同じ水準で考えられるかはあまりに不透明です。

 

退職金も、年金も、貯蓄も、三拍子揃っていても、想定外の出来事で老後が崩壊してしまうことは決してゼロとはいえません。たとえば老後を30年としてシミュレーションしていても、それ以上に長生きをしたら……あっという間に破綻です。どのような場合でも対応できるよう、1年でも、2年でも「資産寿命を延ばす」という努力をするのも、ひとつの手です。

 

[参考資料]

厚生労働省『令和5年就労条件総合調査』

厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』

総務省『家計調査 家計収支編(2023年)』

金融広報中央委員会『令和5年 家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査]』