20代会社員の叫び
Aさんは20代の会社員です。宿泊業のサービススタッフとして働いており、就職と同時に上京し、東京での生活は今年で2年目になります。
給料は手取りでおよそ17万円。仕事にも慣れ、一人暮らしの生活リズムも掴めてきました。しかし都内のマンションで1人暮らしをしていることもあり、生活費に余裕があるとは言えず、いつもギリギリの生活を送っています。
収入
17万円
支出
家賃 7万8,000円
食費 3万円
携帯代 1万円
娯楽費 3万円
水道光熱費 1万2,000円
貯蓄 1万円
「去年はボーナスが多めに出たので、その分は使わないようにしました。生活費が足りないときはここから緊急用に取り崩しています。でも基本的に生活費はいつもギリギリの状態です。テレビやネットで『積立を始めたほうがいい』とよく見ますし、積立に興味もあります。でも、毎月の生活がやっとで貯金すらまともにできないのに、積立なんてとても……」とAさんは言います。
民間給与実態統計による年代別の給与分布について
Aさんのような20代前半の給与について見ていきましょう。 国税庁「令和4年 民間給与実態統計調査」によると、20〜24歳男性の平均年収は291万円、女性は253万円となっています。
全年代を加味した業種別の平均給与で見ると最も高いのは電気・ガス・熱供給・水道業の747万円、 最も低いのは宿泊業、飲食サービス業の268万円で、業種による差が広がっています。 Aさんの年収はおよそ290万円なので、同じ年齢帯である20〜24歳男性の平均年収に近い形となります。
「周りの友人たちも同じくらいの収入ですが、みんな生活に余裕はないです。でも車が欲しいとか、時計が欲しいとか、そこまで物欲はないので、無理をしているわけでも生活がすごく苦しいということでもないです。ちょうど収入と支出の量がぴったり同じ生活を繰り返している感じです。
なのでいまのやりくりのなかから将来の積立をしろって言われたら厳しいです。積立をすると、ちょうどの生活に無理が生じますから。国が新NISAをはじめとした資産形成をやれ、と後押ししているようですが、いまはとてもそんな状況ではないです。もちろん勉強はするようにしています。
積立投資は、長期で行うのがいいと聞いたので、僕のような世代が積立を老後まで続けることができたら一番いいんだと思いますが、そこまでは手が届かない。せっかくのチャンスが目の前に転がっているのに、積立を始められない。ずっとお預けを食らっているような状態とも思います。もったいないですよね」
将来のための準備として、積立についての必要性をわかっていながら、行動に踏み出せない理由を話してくれたAさん。さらにAさんはこう続けます。
「でも、そもそもなぜ将来の積立を自分たちで行わなければいけないんでしょうね。僕たちは働いて、年金保険料を支払っているはずなのに。国は少子高齢化で年金を受け取る人と支える人のバランスが崩れることは何十年も前からわかってたはずですよね。その打開策が『自助努力』ってことなんですかね。
積立に割くお金がないのに、国からは自助努力で準備しろと遠回しに言われているようで、なんとか現状を変えようというがむしゃらな気持ちにはなれません……。給料が上がればこんな気持ちは消えるのでしょうか? でも、給料で仕事を選ぶというのもなんだか違うような気がしています」