客観的な「自分の価値」がわからないとチャンスを逃す
どのマーケットにも相場があり、商品には適正価格があり、自分にどれだけの価値があるのかを見極めなければなりません。履歴書も、名刺も助けてはくれません。
「もう少し冷静になれとは言いませんが、客観的に見てほしい。今のあなたにそれだけの価値がありますか。今の会社が十分な金額を出してくれるのなら、そのまま残ればいい。それが難しいのなら、どこかで折り合いをつけないと」
今の自分への評価や待遇に不満があるのなら、思い切って勝負するのも手です。ひとたび市場に出ればひとつの商品になるのだから、シビアな値付けをされても仕方がないという割り切りが必要です。しかし、いつまでも過去にしがみつき、せっかくのチャンスをふいにしてしまっているのではないでしょうか。
「たとえば、『もし1億円の案件を成立させたらこうしてほしい』と言われれば、もちろん検討します。お互いの条件次第、話の進め方次第で、まとまる可能性もあると思っているのですが……。会社に所属しているだけでは意味がない。肩書、ステイタスが欲しい人はいりません」
会社にいるだけで、自分の席に座っているだけで給料がもらえる時代はもう過ぎ去りました。今ここで、どれだけの貢献ができるのか――それを会社から見られていることに気づかない人もいます。終身雇用、年功序列など、もうとっくに昔の話になったのにもかかわらず、目を背ける人が多いのが現実です。就「職」ではなく、就「社」の意識がどこかに残っているのかもしれません。
過去の呪縛にとらわれず「自分が今できること」にフォーカスする
Aさんは言います。
「転職してきたにもかかわらず、『以前は〇〇〇〇にいました、〇〇〇〇で働いていました』と言う人がいますね。こちらは『だから、何?』と思うだけです。40代にもいますけど、50代に顕著です。その業界のトップ企業にいて、なおかつ、たいした実績を残せなかった人ほどそう言っているような気がします」
過去ももちろん大事。そこで学んだことが今の仕事にもきっと生きているのでしょう。でも、「それはそれ」ではないでしょうか。メッキはいずれはがれてしまう。
「過去の呪縛にとらわれている人が多いと感じます。20代、30代の若い人の中にもいます。誇りを持つことは大事だと思いますが、『自分が今できること』にフォーカスしたほうがいい。面接で『120パーセントやれます』と言っておいて、『20パーセントもできないんだ……』という人ばかり」
大事なことは過去を切り離すこと。新しい会社にいる自分を受け入れること。
「転職して『この会社になじもう』と思ってくれる人はいずれ活躍してくれるはずです。それが本当に大事なこと。いい役職が付いて、好待遇で迎えられても会社のカルチャーになじめず、すぐに辞める人もたくさんいますから」
40代半ば、自らも転職組であるAさんは「自分にしかできないことはあるのか、自分の仕事に付加価値を付けることができるのか」……こう考えながら、日々、働いています。
「私は自分のことが怖いです。45歳になって、自分にしかできない仕事をやれなければ、この先、給料は上がらない。いや、下がっていく一方です。そんなの嫌じゃないですか。やるなら、ちゃんとやりたいし、評価もされたいし」
〝バブル組〞は自分よりも10歳も若い人の仕事に対する価値観を知っておくべきでしょう。そういう人たちに自分がどう見られているのかも。
元永 知宏
※本記事は『まだまだ仕事を引退できない人のための50代からのキャリア戦略 “バブル入社組”のリアルな声から導き出した3つの答え』(翔泳社)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。