給与が上がらないままモノの値上がりが続く昨今、「生活保護」を申請する家庭が増えています。生活保護制度に対しては、「税金の無駄遣い」「働かずに金をもらうなんてズルい」など批判も少なくありませんが、生活保護は本当に“ズルい”のでしょうか? シングルマザーA子さんの事例をもとに、FP Office株式会社の西田順子氏が「生活保護のしくみ」と「生活保護からなかなか抜け出せない理由」を解説します。
本当は働きたいのに…月21.6万円の生活保護費を受給する31歳シングルマザー「現状から抜け出せない」切実な理由【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

生活保護は「資格取得」もサポート…助けを借りながら、少しずつ自立へ

これは生活保護の家庭に限ったことではありませんが、女性が子育てで家庭に入り、その後復職を望んだ場合、子育て期間から復職までのブランクや実務経験のなさ、年齢などが弊害となり社会復帰が難しいケースが未だ多くあります。

 

幸い、A子さんは現在31歳と、これからスキルを身につけて仕事を探すことも可能な年齢です。まだまだ可能性は広がっているでしょう。

 

また、生活保護世帯の場合、受給者が新たな職業を得るために技能や資格を得ようとすると、前述の「生業扶助」を申請することができます。ケースワーカーに相談後、扶助が必要があると認められた場合、資格取得費なども支援してもらえます。ただし、この生業扶助には「資格などが取得できなかった際は返還の義務がある」などの決まりもあります。

 

A子さんの子どもは6歳と5歳。もうすぐ2人とも小学校に入ります。いまよりも時間に余裕ができれば、資格の取得に向けた動きも少しずつとれるようになるはずです。せっかくですから、一生涯働けるようなスキルを身につけてはどうでしょう。

 

「必要な行政支援はフル活用しながら、未来の自分と子供たちのために少しずつ頑張りましょう」と話したところ、A子さんは「これから1つずつ実行してみます。また報告させてくださいね」と明るく返してくれました。

 

 

西田 順子

FP Office株式会社

ファイナンシャルプランナー