Aさん(単身男性)が70歳まで年金を繰り下げた場合の手取り額の変化
まず、65歳時点で年金を繰り下げた場合の給与手取り額をみていきましょう。給与は月20万円です。このうち、
社会保険料 約3万1,000円
所得税・住民税 約1万1,000円
が引かれ、およそ4万2,000円が減少するため、手取り額としてはおよそ15万8,000円となります。
次に70歳時点で年金を繰り下げた場合の手取り額をみていきます。 給与は月20万円ですが、年金が月21万円であるため、収入合計としては月41万円となります。このうち、
社会保険料 約4万2,000円
所得税・住民税 約2万9,000円
が引かれ、およそ7万1,000円が減少するため、手取り額としてはおよそ33万9,000円となるのです。収入から引かれる額としては約3万円多くなりました。ただし、中小企業の多くが採用している協会けんぽの場合、社会保険料は変わりません。
※料率は各都道府県によって異なります。ご自身の計算をされる際はお住まいの料率をご確認ください。
「これじゃあ、繰下げ受給なんてしなければよかった! 大失敗じゃないか!」Aさんは嘆きます。
年金が増えると増えるもの
1.社会保険料
年金は、給料などと同じく所得扱いとなるため、年金の増加はすなわち収入の増加となります。そのため、健康保険などの社会保険料が増加します。
2.介護保険料
40歳以上の方は加入必須の市区町村が運営する保険制度です。保険料率は各自治体によって異なりますが、いずれにしても所得の増加とともに保険料は増加します。
3.所得税・住民税
所得税は、所得に応じて税率が異なります。一般的に所得が上がれば上がるほど税率は上がります。
1~3はすべて支出の部類にあたります。つまり、年金が増えることで収入が増加すると、それに伴い支出も増加。結果、手取りはそこまで増えないということになるのです。
年金を繰り下げると確かに受給額は増えますが、繰り下げれば繰り下げる分、手取り額が増えるわけではないことに注意が必要です。
医療費の自己負担額の増加にも注意!
たとえば70歳以上75歳未満の方の場合、通常は医療費の自己負担は2割ですが、現役並み所得者(年収370万円〜)の場合は現役世代と同じく3割負担となります。加齢とともに治療費がかかりやすくなることも考えると、治療費負担の増加は支出の増加につながります。