年金はそれなりにある、貯蓄だって贅沢はできないかもしれないが問題ない! それほどお金に不安のない高齢者であっても「家が借りられない!」という事態に直面しています。高齢者の住宅難民問題……みていきましょう。
年金「月17万円」でも…70代の独身男性、20年住んだ「賃貸アパート」から立ち退き要求、他の賃貸からも入居拒否の残酷

高齢者に家を貸したくない…不動産会社の言い分

不動産会社側の声も聞いてみましょう。

 

同じく株式会社R65が行った『高齢者向け賃貸に関する実態調査』によると、「管理戸数全体のうち、高齢者入居可能な賃貸住宅の割合」をたずねたところ、「ない」が25.7%、「0~20%」28.9%と合わせると半数を超えます。

 

また「直近1年間で年齢を理由に入居を断ったことがあるか」の問いに対しては、「断ったことがある」が28.3%。4社に1社以上が年齢を理由に入居を断っています。

 

高齢者の入居、何が不安なのかを聞いてみると、「入居前の不安」として最も多かったのが「孤独死による事故物件化」で37.9%。「死後の残置物の処理」「家賃滞納」「火災」「近隣住民からの苦情」と続きます。一方「入居後のトラブル」として最も多かったのも「孤独死による事故」で21.9%。「家賃滞納」「死後の残置物の処理」と続きます。

 

今後、高齢化の進展とともに高齢者の受け入れを強化すべきと考える不動産会社は4割弱になるものの、リスクの大きさから中立的な立場の不動産会社が多いのが現状です。

高齢者の住まい探し…「老人ホーム」もひとつの選択肢

なんとしてでも家を借りたい高齢者と、貸したくない不動産会社。両者の溝はそうそう縮まるものではありませんが、高齢者が賃貸を借りるためのポイントを押さえていけば、入居拒否の回数を減らすことができるでしょう。

 

まず重要なのは「健康面に不安がないこと」を伝えること。不安があるなら家族がケアマネージャーのサポートが得られることを伝えます。また「金銭面に不安がないこと」もポイント。年金額や貯蓄額を証明する書類を準備します。連帯保証人を立てることがベストですが、立てられない場合は「家賃債務保証」など入居審査に通りやすくなる制度を利用する方法もあります。

 

最近はシニア向け分譲マンションなど高齢者専用物件も増えているので、このような物件に絞って探すのも手。ただ費用は高めであることがネックです。

 

いっそのこと「老人ホームに入居する」というのも有効な選択肢。たとえば「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」は自宅とほぼ変わらない自由度の高い暮らしができる老人ホーム。また基本的に外部の介護サービスを利用する「住宅型有料老人ホーム」は、比較的自立の高齢者が多いのが特徴。自立していれば、利用料金を抑えることができるのも魅力のひとつです。

 

気になるのは費用。国土交通省の資料によると、サ高住の月額費用は平均10.8万円。初期費用は保証金(敷金)のみで、10万~30万円程度が相場。賃貸物件に引越しをするのとほぼ変わらない程度の費用で、老人ホームへの入居が叶うのです。

 

高齢者の住宅難民問題。このように選択の幅を広げると、問題解決に向けて大きく前進することができるかもしれません。

 

[参考資料]

厚生労働省『令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』

株式会社R65『65歳以上が賃貸住宅を借りにくい問題に関する実態調査』

株式会社R65『高齢者向け賃貸に関する実態調査』

国土交通省『家賃債務保証の現状』

国土交通省『高齢者の住まいに関する現状と施策の動向』