安定のイメージが強い公務員。特にエリートの国家公務員になれたなら、親は大喜びするはず……というのは、いまや昔の話のようです。なぜ国家公務員は避けられるのか……考えていきましょう。
息子「おれ、国家公務員になる!」父「やめとけ」…平均月収41万円、安定・安心の「国家公務員」が親世代にも不人気のワケ

いまどきの学生が「国家公務員」よりも「民間企業」を目指す理由

官僚志向の東大生の減少。これは東大生だけの話というわけではなく、全体的に国家公務員を敬遠する傾向が顕著です。

 

国家公務員を避ける理由のひとつが労働環境。国家公務員の超過勤務は命ずることができる上限が設定されています。その職員は他律部署(業務量、業務の実施時期 その他の業務の遂行に関する事項を自ら決定す ることが困難な業務を負う部署)において、全体では15.6%、本府省に限ると28.1%です。上限の基準別では、1ヵ月において100時間未満の上限を超えた職員が14.1%、2箇月から6箇月の平均で80時間以下の上限を超えた職員は19.9%となっています。

 

*大規模災害への対処等の重要な業務であって特に緊急に処理することを要する業務に従事する職員に対しては、上限を超えて超過勤務を命ずることができるが、その場合には、各省各庁の長は、当該超過勤務に係る要因の整理、分析及び検証を行わなければならないこととしている

 

長時間働く代わりに給与が良い、であれば納得ですが、実際はどうなのでしょうか。

 

国家公務員全職員の俸給(民間企業の基本給にあたる)は33万4,711円、手当てなども含めた月収は41万3,064円です。一方で大企業・正社員の平均給与は41万6,500円。公務員の給与は民間準拠となっているので、エリートの代名詞といえる国家公務員であっても、民間企業と大差はありません。

 

労働環境が良いとはいえず、また給与も民間企業ほどではない……それであれば、公務員ではなく民間企業を選択する学生が増えても仕方がないことかもしれません。

 

また職場満足度を問う調査で、国家公務員と民間企業の意識の差をみていくと、「あなたは今の職場で働くことに満足しているか?」の問いに、「満足している」が国家公務員で43.6%、民間企業で40.8%。満足度においては国家公務員のほうが優勢です。しかし「あなたは、現在の職場を親しい友人や知人に勧めたいと思うか?」の問いには、「勧めたい」が国家公務員で25.8%、民間企業が30.0%。ここでは民間企業のほうが優先になっています。さらに年齢別に「勧めたい」の割合をみていくと、40代までは民間企業が優勢なのに対し、50代以降は国家公務員が優勢になります。

 

【年齢別「あなたは、現在の職場を親しい友人や知人に勧めたい」の割合】

■~20代

国家公務員…37.3% 民間企業…41.0%

■30代

国家公務員…25.2% 民間企業…30.1%

■40代

国家公務員…20.8% 民間企業…30.5%

■50代

国家公務員…23.8% 民間企業…18.6%

■60~65歳

国家公務員…32.2% 民間企業…22.9%

 

ここから読み取れるのは、世代間で公務員の肯定派と否定派が二分されるという事実。働き方改革が民間企業よりも遅々として進まないとされる国家公務員において、組織の上層部にまでのぼりつめた50代より上の世代は天国のような労働環境である一方、中間管理職よりも下の世代は地獄でしかない……そんな状況が想像されます。

 

我が子のより良い未来を望む父親が「国家公務員になるなんて、やめておけ」というのも、当然のことかもしれません。

 

[参考資料]

人事院『令和4年度 年次報告書』

厚生労働省『令和4年 賃金構造基本統計調査』