温泉は“生もの”…最大の敵は「酸素」

温泉は無酸素状態で生まれる

温泉は“生もの”、“生きもの”です。私たちが採りたての野菜や果物、あるいは水揚げしたばかりの海鮮にこだわるのと同じように、地中からの湧きたての温泉にこだわるのは理に適ったことなのです。

“生きもの”、“生もの”は鮮度が命、つまり生命線ということです。温泉は地中深く無酸素状態で誕生しますから、地上に湧出して酸素にふれ続けることは、温泉の生命線を失うことにつながります。つまり「効かない温泉」になりかねないということです。

したがって、温泉の化学的な価値は、「酸化されていないことにある」といっても過言ではありません。地下水や温泉は酸化と反対の“還元系”で、とくに温泉は酸素のない地下数キロメートルから十数キロメートルの深さから湧きあがってくるため、優れて還元系の温かい水なのです。

温泉ももぎたての野菜やお肌と同じ「還元系」

酸化とは簡単に言うと鉄がサビることです。サビたクギを温泉水につけておくとサビが取れます。これを「還元した」といいます。採りたて、もぎたての野菜、果物も還元系ですから、美味しくて、健康にも良い、つまり体に“効く”からこそ、洋の東西を問わず人びとは鮮度を求めてきたわけです。

じつは私たちの皮膚も還元系なのです。肌が酸化系になるということは、化学的にエイジング、老化するということです。肌に張りがあり、きめが細かい人は還元系の肌を維持できている、実年齢にかかわらず若いということがいえます。

このような知識を活かして還元系の温泉に浸かる習慣をつけていると、からだの細胞をサビにくくすることが可能です。これを“アンチエイジング”、“温泉の抗酸化作用”と称することも可能です。細胞が酸化することにより、老化したり、がん、糖尿病、高血圧症をはじめさまざまな生活習慣病になりやすいことが知られています。

日本でもヨーロッパでも昔から、温泉は「若返りの湯」といわれてきました。皆さんも「なるほど」とうなずかれることでしょう。これは肌の酸化を防ぐ温泉の抗酸化作用の賜物であったのです。