温泉へ行ったら、ぜひ足を運びたい「源泉」

ぜひ美しい源泉を間近に見た後、その源泉が引かれた鮮度抜群の風呂に浸かって、全身の細胞で“源泉力”を感じてみてください。きっと新たな温泉の楽しみ方を発見して、病みつきになるかもしれません。

01.登別温泉(北海道登別市)

登別温泉のシンボルは「登別地獄谷」。土産店、飲食店、大型温泉ホテル、温泉銭湯「夢元さぎり湯」などが軒を連ねる登り坂の温泉街を奥に進むにつれて、硫黄の香りが一段と濃くなります。その香りの源、泉源(源泉地)「登別地獄谷」の入り口にビジターセンター「登別パークサービスセンター」があります。登別温泉の自然や成り立ちを学ぶ展示コーナーがあり、地獄谷や大湯沼、大湯沼川天然足湯などの地図、パンフレット類も入手できます。

登別では一日一万トン(ドラム缶約5万本)、日本にある10種類の泉質中9種類もの泉質が自然湧出しており、その最大の源泉量を誇るのが地獄谷なのです。

日和山の噴火活動によりできた爆裂火口跡で、直径約450メートル、面積は甲子園球場の2.8個分に匹敵する約11ヘクタールもあります。地獄谷遊歩道は楽に巡れ、10~15分もあれば大丈夫です。展望台から、地獄谷の底や斜面から火山ガスや源泉が噴出する様子を一望できます。耳を澄ますと、ボコボコと熱い源泉が湧き出す音が聞こえてきます。

地獄谷の中央付近にあたる遊歩道の最深部まで行くと、「鉄泉池」の案内板がありました。熱湯を噴出する「湯煙地獄」で、中央に小さな「間欠泉」があります。数分おきに噴き上げていて、煮えたぎる光景は迫力満点、地球の息吹すら感じられます。

地獄谷の北にも登別温泉街に供給される泉源「大湯沼」があり、大湯沼遊歩道をたどると10分ほど。ここも日和山の爆裂火口跡で、周囲約1キロメートル。沼底から約130度の硫黄泉が噴出しており、表面は灰黒色をしています。

温泉街へ戻る際にぜひ寄りたいのが、大湯沼からあふれ出した湯川の足湯「大湯沼川天然足湯」です。源泉100%、森のなかの「天然の足湯」ですから、これほど癒やされる足湯は全国でも稀でしょう。遊歩道を歩いて来たあなたへの“大自然からのご褒美”です。

温泉街のメインストリート沿いに快適な入浴施設「夢元さぎり湯」があります。じつは私も「さぎり湯」の大ファンです。ここには硫黄泉と明礬泉のともに地獄谷を湯元とする二つの浴槽があり、もちろん“源泉100%かけ流し”の極上湯です。しかもあまり知られていないのですが、地獄谷から地形の落差を利用した「自然流下」で生源泉が浴槽に注ぎ込まれています。

動力を使って湯を送ると撹拌され酸化されやすいため、「さぎり湯」のような自然流下による送湯は適した方法といえます。このような施設は全国でも稀です。美しい乳白色の湯で、源泉巡りの疲れは瞬く間に解消されることでしょう。

出所:『全国温泉大全: 湯めぐりをもっと楽しむ極意』(東京書籍)より抜粋
[写真1]登別温泉の最大の源泉量を誇る「登別地獄谷」著者撮影
出所:『全国温泉大全: 湯めぐりをもっと楽しむ極意』(東京書籍)より抜粋