源泉かけ流しのなかでも、「直湧き」が温泉の“究極体”

ここまで読まれた皆さんはもう、基本的にどのような温泉が心身に良いのかおわかりですね。鮮度、つまり温泉の本質である“還元系”であることが化学的にも認められているのは、湯口から浴槽に注がれた新鮮な湯が次々と浴槽からあふれ出る“源泉かけ流し”の風呂です。化学的に健康と美容を求めるなら、このような温泉を選択肢に入れたいものです。

なかでも究極の温泉は浴槽の底から自然湧出する温泉でしょう。お湯が湧き出てくる泉源(湯元)の上に浴槽を造った、原始的といえば原始的ですが、もっとも化学的な温泉の利用形態といえます。

こと天与の恵みである温泉に関しては、面白いことに手間暇、お金をかけていない温泉ほど本物で、心身に効くといえるでしょう。ただしこのような温泉を維持管理することは、実際にはなかなか容易ではないことも事実です。

大きな風呂ほど湯の酸化が進みやすい

たとえ源泉かけ流しであっても、泳ぎだしたくなるような大きな風呂ほど、湯口から離れるほど、湯の酸化は進みます。

私どものこれまでの検証では、“湯口”から浴槽に湯が注ぎ、その湯が湯口からもっとも離れた“湯尻”からあふれるまでの4~5メートルを流れる間に、湯の化学的な鮮度はふつう4分の1以下に衰えます。そのくらい温泉の酸化されるスピードは速いのです。経時的に温泉の酸化は進むわけです。

まれに10%程度しか酸化しない抗酸化作用に優れた温泉もあります。ただこのような温泉と出合うことはめったにないことです。一般に酸化を防ぐには湯量が大切になります。温泉にとって大切なのは温度より、むしろ湯量であるということも覚えてください。