がんと診断されると、「もう働けない」「治療・療養に専念しなければ」といったイメージから、仕事を退職してしまう人は少なくありません。しかし、早まって会社を退職してしまうと、その後に後悔することも……。本記事では、株式会社ライフヴィジョン代表取締役のCFP谷藤淳一氏が、秋山恭子さん(仮名/41歳)の事例とともに、がんと仕事の両立について解説します。
年収430万円の41歳・おひとり様女性、乳がん罹患で絶望…「がんで仕事を失った会社員」の悲惨すぎる“いまの姿”【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

あわてて会社を辞めてはいけない

しかし国のこういった取り組みはまだ始まったばかりですし、現実にがん患者さんの再就職には課題が残っています。やはりがんになってしまったからといってあわてて会社を辞めるべきではないということがいえると思います。

 

実際会社員の人が会社を退職すると失うものが少なくありません。たとえば、

 

・有給休暇制度
・病気休暇制度
・休職制度
・傷病手当金制度

 

などが代表例です。もちろん会社によってどこまであるかは違いますが、有給休暇や傷病手当金はどこでも共通の制度です。また、所属している職場で理解があり独自でサポートをしてくれる場合もあります。たとえば出社が難しい場合にリモートワーク対応にしてくれるなどが近年ならではのものですが、ひとまずひとりで抱え込まず相談することも大切であるといえます。

 

ただ先述したとおり、なにもない冷静な状態であれば難しくないようなことを、できなくさせてしまうのががんの特殊性でもあります。いざというときに少しでも落ち着いた対応ができるために大切なことが、あらかじめ『がんを知る』ことです。

 

がんは怖い病気という印象はあるかもしれませんが、がんは治る時代にもなりつつあるといわれています。また、がんに罹患しても、がんと向き合い仕事や日常生活をふつうに送っているがんサバイバーの方もたくさんいます。こうしたことを知っておくことで、万が一自分自身ががんの診断を受けてしまったときのショックを緩和できるかもしれません。

まとめ

がん保険に加入している人のなかには「がん保険に加入しているからがんは安心」と感じている方がいらっしゃいます。実際筆者は過去に1万回以上の保険相談会に携わってきて、お客様からこのセリフを何度か聞いてきました。

 

しかしがん保険はあくまでがん治療費をカバーすることが目的の保険です。事例にあったようにがんはメンタル的なダメージも大きいですし、それにより思いもよらない判断をしてその後の生活や人生に影響を与える恐れがあります。

 

できればがん保険を考える時に保険の比較選択だけでなく、がんという病気のこと自体を知って知識を持っておくこともがんの備えとして大切です。もし自分でそういった知識を得ることが難しい場合には、がん保険相談の際にがんを取り巻く環境をよく知る専門家に相談することをお勧めします。

 

 

谷藤 淳一

株式会社ライフヴィジョン

代表取締役