身近な人ががんに罹患するなど、がんの恐ろしさを目の当たりにするようなきっかけがあると、自分のがんへの備えが気になり、保険加入を検討する人は少なくないでしょう。しかし、がんに備えるための保険を選ぶ際、ネット上の膨大な情報から正しいものにたどり着くことは、決して簡単なことではないと知っておく必要があります。本記事では、株式会社ライフヴィジョン代表取締役のCFP谷藤淳一氏が、横山ちはるさん(仮名・42歳)の事例とともに、がんに備える保険選びの注意点について解説します。
保険会社「お支払いの対象外です」…年収550万円の42歳おひとりさま、乳がんに手厚い〈女性保険〉に加入も…がん再発で「まさか、給付金を受け取れないなんて!」その理由【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

ネットで見つけた「女性向け医療保険」に加入

東京都墨田区在住、42歳会社員の横山ちはるさん(仮名)。

 

横山さんは大学卒業後人材派遣会社に勤め年収は約550万円、現在はシングル世帯です。仕事では以前は営業職のマネージャーとして多くの部下を抱えバリバリ働いていましたが、現在は事務職についています。

 

横山さんは5年前に早期の乳がんが発覚し手術を受けました。手術は無事に終わり、がんはきれいに取りきれたのですが、2年前にがんの転移が発覚しそれ以来再治療となり、いまに至ります。リモートワークの活用など会社側も横山さんのがん治療と仕事の両立に対し支援をしてくれているので、その点は横山さんも非常に安堵しています。

 

ただ現在も治療が続くなか、唯一の後悔が乳がんへの備えと思って選択して加入した保険が失敗であったことです。

 

横山さんは7年前、職場の先輩社員が乳がんを発症し治療でとても苦しい思いをしているのを目にしました。そしてその先輩社員から『横山さんもがん保険にはちゃんと入っておいたほうがいいよ』というアドバイスをもらい、自分も他人事ではないと感じた横山さんは、がん保険の加入を検討しました。

 

保険に関する知識はほとんどなかった横山さん。先輩社員はその後退職してしまったため、おすすめのがん保険などについて具体的に話を聞くことはできませんでした。そのためまずはインターネットで情報収集をしようと、『女性 乳がん 保険』というキーワードで検索をしてみると、がん保険の比較サイトがたくさん出てきました。そのなかのひとつで目に付いたのが、『女性保険 おすすめランキング』というもの。

 

サイトの中を見てみると女性保険とは『女性特有の病気に手厚い医療保険』という意味のようです。乳がんなど特に女性のリスクが高い病気に備えられるといった説明もあり、横山さんは興味がわいて詳しく見ていくことに。

 

基本的には医療保険ということで、あらゆるけが・病気でお金を受け取れる保険ですが、乳がんや子宮がんなど女性特有の病気の場合には、2倍の金額が支払われる形になっていて、女性特有の病気に手厚くなっているようです。

 

加入の根拠と実際の保障内容

横山さんは女性保険だけでなく、本来の目的であったがん保険もさまざま見比べてみたのですが、情報がたくさんありすぎてだんだんと疲れてきてしまいました。そして最終的に、

 

1.乳がんはやはり怖いので、保障が手厚くなる女性保険は安心感がある
2.がんという重い病気の場合治療は長期入院になるイメージ
3.がん以外にも、交通事故など性別を問わないけが・病気での入院費の発生もあり得る

 

といった点から下記内容の女性保険に加入しました。

 

■けが・病気で入院:入院1日当たり1万円お支払い(1回の入院で60日まで保障)
■けが・病気で手術:手術1回あたり10万円お支払い(回数無制限)
■女性特有の病気で入院:入院1日あたり1万円上乗せしてお支払い(入院日数無制限)
■女性特有の病気で手術:手術1回あたり10万円上乗せしてお支払い(回数無制限)

 

そしてこの保険に加入してから2年が経過しようとしたころ、横山さんは本当に乳がんに罹患し、入院をして手術を受けることになります。