がんと診断されると、「もう働けない」「治療・療養に専念しなければ」といったイメージから、仕事を退職してしまう人は少なくありません。しかし、早まって会社を退職してしまうと、その後に後悔することも……。本記事では、株式会社ライフヴィジョン代表取締役のCFP谷藤淳一氏が、秋山恭子さん(仮名/41歳)の事例とともに、がんと仕事の両立について解説します。
年収430万円の41歳・おひとり様女性、乳がん罹患で絶望…「がんで仕事を失った会社員」の悲惨すぎる“いまの姿”【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

収入消失へのリスク管理

今回の事例で秋山さんはまさかの乳がん罹患を受け、想像以上の不安と絶望感から治療が始まる前に会社を辞めてしまった結果として収入を失い、健康面やがん治療費ではなく日々の生活費に対する不安が発生してしまいました。

 

実はこのような事例は決して珍しくはありません。がんが身近でない人にとっては、がんの診断直後の退職は現実的ではないかもしれませんが、そこまで冷静さを失わせるところががんの特殊性といえるかもしれません。それくらい日本ではいまだに『がん=死』というイメージがあるのだと思います。

 

確かにがんは不治の病として位置づけられていた時代はありますが、それは遠い過去のはなしです。

 

出所:国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」を基に筆者が作成
[図表]部位別がん5年相対生存率 出所:国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」を基に筆者が作成

 

上の図表は国立がん研究センターが発信しているデータです。現在ではがんの5年生存率はがん全体で60%を超えています。がんの種類によってその数値は変わってきますが、女性で最も罹患者数が多い乳がんでは90%を超えていますし、さらに今回の事例の秋山さんのように早期の乳がんの場合にはほぼ100%となっています。

 

こういったデータからもがんになってしまったらそれでおしまい、というわけではなく、治療を終えてそれまでどおりの日常生活が戻ってきますし、がん患者さんによっては通院でがん治療を受けながら日常生活を送っている人も少なくありません。

 

ですからがんの診断を受けたとしても日々の日常はそこからも長く続いていくため、生活を支えていく毎月の収入については失うわけにはいきません。

 

国のがん対策のひとつ『就労支援』

日本にはがん対策基本法という法律が存在するのですが、これは国全体でのがん克服のために平成18(2006)年に成立した法律です。それに基づき現在は『第4期がん対策推進基本計画』というアクションプランが策定され、さまざまな施策が行われています。

 

この計画のなかに『がん患者さんの就労支援』が明記されているのですが、国のがん対策で明記されるということはそこに問題があるということです。第4期がん対策推進基本計画の『就労支援について』という項目のなかで以下のような記述があります。

 

平成30(2018)年度に実施された患者体験調査では、がんと診断を受けて退職・廃業した人は就労者の19.8%を占めており、そのうち初回治療までに退職・廃業した人は56.8%となっている。

 

現在1年間に約100万人の方ががんの診断を受けるといわれていますので、決して少なくはない人数が治療開始前に退職・廃業しています。国のがん対策では、現在ハローワークにキャリアコンサルティングなどの資格を持つ専門の就職支援担当『就職支援ナビゲーター』を配置し、がん患者さんなどの就職支援策を行っています。また、企業に対しても、

 

国は、がん患者が治療と仕事を両立できるよう、中小企業も含めて、企業における支援体制や、病気休暇、短時間勤務や在宅勤務(テレワーク)など企業における休暇制度や柔軟な勤務制度の導入等の環境整備を更に推進するため、産業保健総合支援センター等の活用や助成金等による支援、普及啓発に取り組む。

 

という方針でさまざまな働きかけをしています。