新築マンション価格は変動が激しく、1980年代~1990年ごろまではバブル景気で大きく上がり、バブル崩壊後に急落、低迷し、2000年代後半からまた上がりました。特に首都圏ではアベノミクス以降再び大きく上がっています。そして今回東京23区では、年間平均価格が初の1億円超えです。本記事では、住まいの値上がりと密接に関わる住宅ローンの長期化リスクについて、FP1級の川淵ゆかり氏が解説します。
東京23区新築マンション価格“1億円超え”!庶民「ますます手が届かない…」→人生の半分以上が〈ローン地獄〉の恐怖【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

東京23区新築マンション年間平均価格が「1億円超え」

調査会社「不動産経済研究所」によると、東京23区で販売された新築マンションの2023年の年間平均価格が1億1,483万円と初めて1億円の大台を超えました。前年と比較すると実に39.4%の上昇率になります。首都圏(東京都、神奈川、埼玉、千葉各県)全体の平均価格も8,101万円と過去最高を更新し、こちらも前年から28.8%上昇、過去最高となっています。


こうした首都圏の人気の要因として、マンションの通勤等の利便性のよさや周辺での開発が続いていることがあげられます。販売のターゲットも高額所得者や外国人がメインで、ますます一般庶民には手の届かない物件となっています。なお、平均価格の大きな上昇については、建設資材や人件費の高騰で工事費が上昇していることも原因のひとつとされます。


これは首都圏のマンションだけに限らず、不動産全体に影響しています。資材や人件費の上昇は今後も考えられますので、「値上がりする前に決めてしまおう」といった意見のほかに「金利が低いうちに早めに購入しておこう」といった理由も不動産価格を需要が高めていると考えられます。

不動産業者「値段の高い住まいをどう売るか?」

さて、値段が上がっていく一戸建てやマンションを売る側の立場に立って考えると、「いかに購入者の負担を少なくするか」を目的に、高い物件でも購入しやすいような仕組みを考えていくことになります。

 

効果的なのは、「住宅ローンの毎月の返済額を減らすこと」です。

 

しかし、すでに金利は底を付いており、返済額を減らす効力はありません。そのため、ローン期間を延ばすことで、毎月の返済額を減らすことが実現できるわけです。

 

住宅ローンの長期化と、そのリスク

実際に住宅ローンの長期化は進んでいます。

 

住宅ローンというと35年が主流でしたが、2009年に住宅金融支援機構が長期優良住宅を対象とした返済期間50年の「フラット50」の提供を始めたのを皮切りに、最近ではネット銀行や地方銀行でも50年の住宅ローンが拡大しつつあります。

 

住宅金融支援機構が、住宅ローンを取り扱う金融機関を対象にアンケート調査を実施した結果によると、すでに強化している取り組み、または今後強化する取り組みを尋ねたところ「返済期間35年超のローン提供」との回答が44.9%と最も多くなっています(独立行政法人・住宅金融支援機構:2022年度 住宅ローン貸出動向調査)。

 

住宅ローンの長期化に伴い、住宅ローンで設定している「完済時年齢」も上げている金融機関が出ています。完済時年齢を「80歳未満」としている金融機関が一般的ですが、これを「81歳未満」や「82歳未満」さらには「85歳未満」とする金融機関もあります。
 

ですが、多くの人が80歳まで住宅ローンを返済し続けるのは非現実的で、50年のローン期間となると、人生の半分以上を住宅ローンの返済に費やすことにもなります。そう考えると非常に恐ろしいですね。繰り上げ返済を予定して長期のローンを組む人もいますが、長期になればなるほど将来のことは予想しにくくなります。


早期退職や役職定年などによる収入減、増税や値上がりなどの支出増、病気や介護などで、住宅ローンの返済に悩む人は何人も見てきましたし、繰り上げ返済どころではなくなってしまった人もいます。住宅ローン返済期間中にはなにが起きるかはわかりませんので、長期になればなるほど、そのリスクは大きくなっていきます。