日本の住宅は、他の先進諸国と比べて省エネ基準が不十分で、「ヒートショック」による悲劇が多いことをご存じでしょうか。日本の住まいにおける「ヒートショック」の実態、「住まいと健康の深い関係」、そして今後、住まいの省エネ効果を高めることで得られる「経済的メリット」について、長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説していきます。

 

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断熱性能を上げることで得られる「経済的なメリット」

断熱性能は生命の安全性だけではなく、お金の面でも大きく影響してきます。

 

住宅ローンを借りると所得税と住民税が減税される、通称「住宅ローン減税」は2024年の入居分から建物性能に対する条件が厳しくなっています(関連記事:『【超重要】2024年1月から変わる「住宅ローン減税」知っておくべきポイントを専門家が解説』)。

 

認定長期優良住宅、認定低炭素住宅、ZEH基準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅のどれかに当てはまらない場合、住宅ローン減税を受けることができなくなります。断熱性能の低い住宅はもはや減税対象にすらならなくなったのです。

 

2023年末の段階で売れ残っていた建売住宅が省エネ基準に適合しない場合、住宅ローンを使って購入しても1円も減税されないため注意が必要です。

 

住宅ローン減税は2024年、2025年の入居の場合、建物の種類によって最大364~409.5万円の控除額があります。新車1台分に相当します。これが無くなるのは家計のキャッシュフロー上、大きなデメリットとなります。今後、2025年度には平成28年省エネ基準における「断熱等級4」以上の性能が最低基準として義務化されます。2030年にはさらに基準が引き上げられ、現在の「断熱等級5(ZEH基準)」が最低基準となります。

 

また断熱性能の高さは建物の寿命の長さとも関係があると言われています。断熱性能が低ければ建物の躯体が結露しやすく、木材が腐朽する原因となってしまうのです。建物の寿命が短ければ当然、老後に建て替えや大規模なリフォームが必要になり、大きな出費を余儀なくされます。年金制度への不安があり、給料が上がらない日本社会では、老後にもう一度住宅購入ができる人はごく一部に限られます。断熱性能を軽くみたばかりに、老後の生活がヒートショックのように命の危険にさらされ、さらにお金の計画も大きく狂ってしまうことだってあり得るのです。

断熱性能だけではない「ヒートショック対策」

断熱性能が高い建物にするだけではなく、さらに屋内の温度差を無くすためには暖房のシステムへの投資が有効です。最近では「全館空調」という種類の暖房が増えつつあります。これは、小屋裏に設置したエアコンからダクトを通して家中を温めるという仕組みです。これであれば脱衣所やトイレだけが寒すぎるということはなくなります。

 

ただしエアコン1台で全館を温めるため、建物の断熱性能が低ければ、外気温が低い地域ほど光熱費が高騰します。国の省エネ基準を大きく超えた断熱基準と合わせて導入することで光熱費の高騰を抑えつつ安全な室温管理が可能になります。

 

このように考えていくと、今後の新築価格はさらに高くなっていくことが予想されます。住宅購入時には今まで以上に資金計画を精査する必要があるでしょう。性能の高さと価格のコストパフォーマンスを見極めていく知識と、精通したプロからのアドバイスが求められます。

 

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