大企業を中心に兼業を許可する勤務先が増え、副業を始めようとしている人も多いのではないのでしょうか。本記事ではAさん夫婦の事例とともに、収入が足りないと感じる際にまず最初に考えるべきことについて、長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。
世帯年収990万円の30代・仲良し夫婦、収入減で「住宅ローン・月12万円」を支払えず…苦労を共にした妻が始めた「副業」に生来おおらかな夫、大激怒のワケ【FPが解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

鬱による収入減をきっかけに始めた「内緒の副業」

夫 Aさん 33歳 会社員 年収540万円

妻 Bさん 30歳 契約社員 年収250万円

 

妻Bさんは27歳のときに鬱状態となりました。当時勤めていた会社で毎日深夜に帰宅し休日も出勤するような過酷な業務を強いられたことが原因でした。朝起きあがれないほど毎日体調が悪く、頭がぼんやりして簡単な料理すら作れなくなりました。身だしなみを整えるのも難しく毎日同じ服装。

 

心療内科から「鬱状態」と診断書をもらい職場に休職を申し出たものの、上司は舌打ちをして露骨に嫌がる状態。そこで夫のアドバイスを得て退職弁護士に代行手続きを依頼。勤務先とは一切話をせずに退職しました。

 

1ヵ月間、精神科病棟に入院して療養したのち、2年間自宅で療養しました。感情に起伏が激しく夫に対してささいなことで激昂したり、被害者意識を膨らませて号泣したり、ネットで何度も高額な衝動買いを繰り返すなど、性格が以前とまったく変わったかのようでした。

 

妻Bさんが静養期間に心配していたのは、買ったばかりだったマンションのローンのこと。連帯債務の契約で住宅ローンを借りているのです。「僕が1人でも支払えるから問題ないよ」と夫はいってくれましたが、夫ひとりの年収で月12万円のやりくりは難しいのが現実です。

 

500万円あった貯蓄は少しずつ減っています。就業不能保険に加入していましたが、Bさんの状態では支払い対象にならないようです。

 

夫Aさんは妻のことを気遣い、家計の収支のことは妻には伝えないようにしていました。住宅ローンの返済が家計を圧迫しているのは間違いないのですが、貯蓄がゼロになるまでは現状のままでいようと考えました。

 

幸い、妻Bさんは2年後の29歳のときに体調が落ち着き、契約社員として再就職することができました。しかし、年収は前職よりも200万円減る見込みです。

 

「これでは貯金はあまりできないよね……」と申し訳なさそうにする妻Bさん。「ゼロよりはずっと助かるよ。いまある収入でやりくりしていけばいいさ」と夫Aさんは慰めます。夫はよくいえばおおらか、悪くいえば大雑把な性格なのです。

 

妻Bさんが知った副業のやり方

妻Bさんは毎晩寝る前にSNSを眺めるのが日課でした。興味があったのは「副業」のことです。収入が減った分をなんとか補いたい、できれば楽をして稼ぎたい、という思いに囚われていました。

 

副業について調べていると、おすすめ欄に次々と情報が流れてくるのがSNSのアルゴリズム。埋もれそうなほどの情報量です。そのなかで副業についての「教材」を販売しているアカウントを見つけました。SNSの投稿をマネタイズするという内容で、アカウント主は月に50万円も稼いでいるとのこと。真偽はわかりませんが、どうやって稼ぐ仕組みなのか知りたいと妻Bさんは思いました。

 

いわゆる「情報商材」というものでしたが、2万円を支払い、教材を手に入れました。そこにはこんなことが書かれてありました。

 

SNSでフォロワーを増やす

ブログに誘導する

ブログで商材を紹介し収益を得る

 

簡単な話ですが、妻Bさんには初めて聞いた知識でした。いままでSNSで紹介されて買ったもの……あれはいわゆるアフィリエイトだったのかと驚きました。自分がいつも見ているアカウントはフォロワーが10万人以上いて、ときどき唐突に宣伝を始めるのが不思議でしたが、あれがそうなのかと。

 

これなら私にもできるかもしれないと思った妻Bさん。自分のアカウントで、自分の病気と療養生活について紹介してみようと考えました。そのうえでなにを宣伝していくのかはあとで決めるとして、とりあえず始めてみることに。