(※画像はイメージです/PIXTA)

Hさんの実家は、代々続く資産家です。厳格な父親を嫌い、実家とは距離をとっていたHさんですが、父の急逝により突然相続を受けることになりました。しかしある原因から、Hさんは家計破産の危機に……いったいなにがあったのか、牧野FP事務所の牧野寿和CFPが、具体的な事例を通じて原因と解決策を示します。

2.Hさんの自宅を引き払う

「60歳になってから引っ越す」と言っていたHさんですが、筆者はすぐにでも引っ越したほうがいいと考えます。その理由は、「小規模宅地等の特例」の「特定居住用宅地等」の適用を受けるためです。

※「小規模宅地等の特例」の詳細については、国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」を参照

 

「小規模宅地等の特例」の「特定居住用宅地等」とは?

実家の土地を母から相続する際には、国税庁が公表する「相続税路線価」を使って相続税評価額を算出します。

 

しかし、「小規模宅地等の特例」の「特定居住用宅地等」が適用されれば、宅地のうち330m2(約100坪)まで評価額を80%下げることができます。

 

「特定居住用宅地等」は、被相続人(ここでは亡くなる母)が自宅として使っていた宅地等に対する特例です。適用を受けるには、次のような主要な要件に当てはまっている必要があります。

 

1.配偶者が相続する

2.同居していた相続人(長男など)が相続する

3.配偶者や同居人がいない場合、3年以内に相続人などが所有する家屋に居住したことがないこと

 

Hさんは、自宅のマンションを売却し、その後3年以上実家で母と同居すれば、この特例を受けることができます。そのため、できることならすぐにでも実家に引っ越したいところです。

 

しかしHさんは、「申し訳ないのですが、すぐには引っ越すことができません」と言います。理由は次の2点です。

 

①子どもの教育

Hさんの子どもは、現在高校2年生と中学2年生。ともに進学を目指しており、進学先が決まるあと1年半ほどは環境を変えたくないといいます。

 

②住宅ローン返済中の処分

Hさんには、住宅ローンがまだ約2,200万円ほど残っています。仮に2人の子どもの進学を見届け、1年半後に自宅マンションを売却するとしても、この残債を1年半で完済できる資金はありません。

 

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本記事は、株式会社クレディセゾンが運営する『セゾンのくらし大研究』のコラムより、一部編集のうえ転載したものです。