(※画像はイメージです/PIXTA)

Hさんの実家は、代々続く資産家です。厳格な父親を嫌い、実家とは距離をとっていたHさんですが、父の急逝により突然相続を受けることになりました。しかしある原因から、Hさんは家計破産の危機に……いったいなにがあったのか、牧野FP事務所の牧野寿和CFPが、具体的な事例を通じて原因と解決策を示します。

「実家消滅」を回避するための対策とは

(※画像はイメージです/PIXTA)
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Hさんから話を聞いた筆者は、数日後にBさんとともにHさんの実家を訪問。Hさんと母、妹に対し、次の2つの提案を行いました。

 

1.母が生きているうちに資産を子どもに移す

2.Hさんの自宅を引き払う準備を行う

1.母が生きているうちに資産を子どもに移す

Hさんの年収は約700万円で、奥様のパート収入を含めても約850万円です。また、このたび父から相続したアパートの家賃収入は、当面、住宅ローンの繰上げ返済に使いたいと言います。たしかに、繰り上げ返済すれば利息支払分を低減することができます。ちなみに、妹の家計収支もHさんとよく似ているそうです。

 

調べたところ、母の資産には余裕があり、今後単身で生活しても支障はなさそうです。しかし、母が亡くなった場合、相続税の納付や実家の維持費を工面する対策が必要です。

 

そこで、あらかじめ生前に母の資産をHさん兄妹に贈与し、相続時の課税額の軽減を図ることにします。

 

2024年以降見直される「相続時精算課税」

相続時精算課税は、2024年1月1日より従来の2,500万円の基礎控除とは別に年間110万円までの基礎控除が創設され、この控除分は2,500万円特別控除の対象外となります。したがって、母の相続時の相続財産に加算されません。

※相続時精算課税制度の詳細と、暦年課税と相続時精算課税制度の比較などについては、生命保険文化センターHP『「相続時精算課税制度」とはどんな制度?』を参照

 

そこで、Hさんは2024年以降、母から相続予定の「アパートA土地建物」のうち、“建物のみ”を相続税精算課税で生前贈与してもらいます。アパートAの建物価格は2,500万円以下ですので、贈与税は課税されません。

 

建物を贈与してもらえば、家賃はHさんの収入となり、アパートの土地は使用貸借として無料で母から借りられます。

 

加えて、毎年110万円現金を贈与してもらい、アパートAの家賃収入と現金は相続税納付のために貯めていくことにしましょう。

 

また、Hさんの妹は日頃株式投資をされています。そこで、母は妹に対しては、相続税精算課税を使って2,500万円弱までの株式と、110万円の現金を毎年基礎控除の枠で贈与します。

 

なお、母の相続時、株価の評価額は相続税精算課税で贈与した時価となります。したがって、贈与する株式は今後株価が上昇する見通しがあるものに絞り、一括して贈与することなく慎重に行う必要があるでしょう。また、配当金も妹の収益になります。

 

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本記事は、株式会社クレディセゾンが運営する『セゾンのくらし大研究』のコラムより、一部編集のうえ転載したものです。