価格高騰が続く首都圏の新築マンション市場。中古市場同様で、特に、利便性の高いタワーマンションなどは価格が割高であっても依然人気です。景観の美しさ、日当たりの良さ、共用施設の充実など、多くのメリットが挙げられるタワマン。高い人気も納得ですが、なかには「タワマンに住んで後悔する人」も……いったいなぜか、具体的な事例をもとに、石川亜希子AFPが解説します。
平屋が恋しい…年金月18万円で「湾岸エリアのタワマン」に住む、60代夫婦の嘆き【FPが解説】

メリットは確かに多いが…A夫妻が“タワマンでの暮らし”にストレスを感じたワケ

まず、タワマンで暮らすにあたってエレベーターの利用が当たり前になることは、購入前からわかっていたつもりでした。しかし、特に朝はたくさんの人が利用するため、エレベーターを待つ時間が想像以上に長かったそうです。また外に出てから忘れ物に気づくと、取りに戻るのにすごく時間がかかります。

 

ゴミを出しや近所への散歩にも、いちいちエレベーターを待つ必要があり、生粋の江戸っ子でせっかちなAさんはついイライラしてしまいます。Aさんは、だんだん外出すること自体が億劫になってきてしまいました。

 

また、妻のBさんも、暮らしに不便を感じるようになりました。部屋の窓は窓枠に直接ガラスがはめ込まれた「FIX窓」になっており、開閉することができません。また、「事故を防ぐ」「景観を損ねる」といった理由から洗濯物の外干しは禁止されており、いままでのように自分のタイミングで換気や掃除をしたり、布団を外に干したりできなくなってしまったからです。

 

こうしたストレスが重なったことから、AさんもBさんも、しだいに居室に引きこもりがちになってしまいました。下町に暮らし、昔ながらの近所付き合いに慣れていたA夫妻にとって、タワマンでの生活は息苦しいものになっていたそうです。

 

「あぁ、実家の平屋が恋しい……」Aさんがため息をつきながらつい口すると、Bさんもうなずきました。

 

一方、娘のCさんはタワマンライフを満喫中です。また、両親にお金があることを知ってからというもの、家にお金を入れることも止めてしまい、ますます推し活に勤しんでいます。

 

内心自分の将来を不安に思っていたCさんですが、一発逆転できたような気持ちで、高層階からの眺めがいっそうその気持ちを大きくします。いままでは自分の収入でやりくりしながらグッズやライブにお金をつぎ込んでいましたが、だんだんと足りない分は両親に無心するようになっていきました。