“武蔵小杉のタワマン”に住むAさん…「高校無償化」のニュースにご立腹
Aさん(44歳)は、妻Bさん(43歳)と中学3年生の長男(15歳)の3人家族です。夫婦ともに都内にある上場企業に勤め、世帯年収は1,300万円。長男は都内にある中高一貫校に通っています。
住まいは武蔵小杉駅から徒歩5分のタワーマンションです。住宅ローンの返済はまだ続きますが、立地が多摩川のそばで眺望がとてもよく、自宅から花火大会を楽しむことができるところも気に入っています。
Aさんはある日、朝通勤のために電車に揺られながらスマホを開いていたところ、「東京都高校無償化」というニュースが目に飛び込んできました。
東京都の思い切った方針に驚き、「それは助かるなぁ」と思ったAさんですが、よく読んでみると“都内にある高校に通っていても、都内在住でなければ対象外”ということが判明。
息子は中高一貫校のため高校に上がっても引き続き都内に通う予定ですが、住まいのある武蔵小杉は神奈川県川崎市に位置しています。一瞬喜んでしまっただけに、Aさんはなんともいえない不平等感にモヤモヤした思いで1日を過ごしました。
帰宅すると、妻のBさんも同じニュースをテレビで知った様子。Aさん同様、不服なようです。
「都心へ通うのが便利だから武蔵小杉に家を買ったのに、こんなことなら多少不便でも東京の郊外とかにしたほうがよかったのかな」
夫婦で話しても、不満は晴れません。長男が黙ってテレビを見ているなか、ついつい不毛な話を繰り広げてしまいました。多摩川の向こうが果てしなく遠く感じます。
「高校無償化の所得制限撤廃」とは?
現在、国の「高等学校等就学支援制度」により、世帯年収910万円未満の家庭については公立高校の授業料は無償となっており、私立高校の場合は上限で39万6,000円まで助成されることになっています。
この国の制度に上乗せする形で、さらに東京都は「私立高等学校等授業料軽減助成金」として、私立高校等に通う世帯年収910万円未満の家庭に最大47万5,000円まで助成を行っています。
ところが今回、東京都はこの910万円という所得制限を2024年度に撤廃する方針を明らかにしたのです。
高校の授業料は現在、都立高が年間一律約12万円、私立高で平均約48万円となっていますので、都内在住のほぼすべての高校生が無償化の対象となります。都内在住の子どもがいる家庭にとっては、大変ありがたい制度になることは間違いありません。
一方、東京都から川を隔てただけの神奈川県に住むAさんにとっては、長男が都内の高校に通う予定であっても、なんの恩恵も受けられないことになります。