マクロ経済スライド発動で、2024年は「年金目減り」の見通し
さまざまな角度から年金の受給額についてみてきましたが、日本の年金事情、良好とはいいがたいことが、どことなく感じられたかもしれません。また2024年度、公的年金の支給額は引き上げとなる見通し。ただし給付を抑制する「マクロ経済スライド」が発動となり、実質では目減りするといわれています。
マクロ経済スライドは、年金の増額幅を物価や賃金の伸びよりも小さくするよう調整するもので、年金財政を維持する仕組みとして2004年度に導入されました。年金保険料は現役世代の負担増に歯止めをかけるため上限を固定。その範囲で支給を賄うため、給付を少しずつ抑えていく必要があったためです。
しかしマクロ経済スライドは、デフレ下では発動できないルールがあり、導入以来、実際に発動されたのは23年度までに4回だけ。給付を抑制しきれずにいたわけです。
マクロ経済導入当時、給付抑制は2023年度に終了する予定でしたが、現在は国民年金(基礎年金)の抑制は2046年まで続くとされています。それに伴い、年金の目減りは続き、給与水準も下がり続ける見通しです。また国民年金の給付水準を維持、底上げを目指し、保険料を納める期間を60歳→65歳と、45年間にする検討も始まっています。
日本の公的年金制度は「100年安心」と称し、保険料さえ払っていれば「年金がもらえない」ということはないでしょう。ただこれまでの流れをみても、いまの現役世代が実際に年金をもらうようになったとき、現行制度と同じではないと考えるほうが自然ですし、受給額も同水準というわけにはいかないのも明白です。
厚生労働省『2022年 国民生活基礎調査』によると、「総所得に占める年金の割合が100%」という高齢者世帯は44%、「80~100%」が16.5%。年金の依存度が8割以上の高齢者は6割にものぼります。そして暮らしぶりについて「苦しい(「大変苦しい」と「やや苦しい」の合計)」と回答した高齢者世帯は48.3%と半数近くにも上りました。
年金が頼りの高齢者にとって、物価高は脅威。総務省が発表した2023年平均の東京都区部の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合指数)は前年比3.0%上昇。特に上昇が目立ったのが生鮮食品で8.0%増でした。
単月でみると、2023年12月の東京23区の消費者物価指数は、価格変動の大きい生鮮食品を除いて、前の年の同じ月に比べ2.1%上昇。伸び率は2ヵ月連続で鈍化し、急激な物価上昇に出口が見えてきました。それでも年金の実質目減りの見通しは変わりません。
――どう生きていけばいいのか
年金頼みの高齢者にとって絶望的な局面が続きます。
[参考資料]