死ぬまでこの老人ホームにいられます…そんな保証はどこにもない
有料老人ホームは特に入居待ちが多く、すぐに入ることはできないとされる「特別養護老人ホーム(特養)」の受け皿になっています。実際に前出の調査でも、「入居にあたって特養を検討したか?」の問いに、45.7%が「はい」と回答。別の視点からみれば、有料老人ホームに入居している人の4~5割は「待機期間の長い特養を諦めて、有料老人ホームへの入居を決めた」という人たち。特養は安価な費用が魅力なので、それに代わる有料老人ホームでも、費用を優先して選ぶと考えらえられます。
そんな有料老人ホーム。入居が決まり「やれやれ」とひと安心。ただ楽しいセカンドライフが待っているとは100%言い切れないのが難しいところ。
――突然、出て行けなんて……そんな酷い話ありますか?
そう憤るのは、80代の母が「有料老人ホーム」に入居していたという50代の女性。母は要介護1、外部サービスを利用しながら自宅で暮らしていたものの、1人暮らしに不安を覚え、「有料老人ホーム」への入居を決めたといいます。
母の月々の年金は手取りで12万円程度。施設の月額費用も同程度ということが、入居の決め手だったといいます。
入居から2年ほど経ったとき、突然「運営元が自己破産」の連絡が入りました。まさに寝耳に水。この施設を運営していたのは元々は飲食店を経営していた人で、「美味しい食事を提供できるホームを作りたい」とカタチにした施設だったと聞いています。こだわった食事、それでいて入居費用もリーズナブル。「終の棲家としても魅力的」と母子は感じたといいますが……。
――結局、経営のセンスがなかったんですよね
と女性。理想と実際の経営は違ったよう。入居待ちがいると噂されるほど常に満室のホームでしたが、運営元の倒産、ホームの閉鎖の話を聞き、母親は大いに戸惑ったといいます。1ヵ月ほどで新しいホームへの入居が決まったのは不幸中の幸いでした。
昨今、増えているのが老人ホームの閉鎖。東京商工リサーチによると、2022年の「老人福祉・介護事業」の倒産件数は過去最多の143件だったといいます。多くは訪問介護業者ですが、有料老人ホームでも12件の倒産がありました。
前述の通り、今後ニーズが高まる成長市場として介護業界は注目を集め、さまざまな業種からの参入が相次ぎました。一方で競争が激化するなか、撤退を余儀なくされるケースも増加しています。
介護施設を選ぶ際のポイントを大きく3つ。
①費用だけで決めない
②複数施設見学して話を聞く
③「介護サービス情報公表システム」で調べる
③は厚生労働省のホームページ内にあるサイト。職員の勤続年数や、職員に対する研修の仕組みなどを見ることができます。職員へのサポートが充実し、長く働ける施設かどうかも、選択の材料となるでしょう。
[参考資料]