食事に妥協はしたくない…試食会を繰り返し行って見つけた「老人ホーム」だったが
ここまで見てきたのは、あくまでも傾向。「高齢者だから魚なんでしょ」とか「高齢者といったら和食でしょ」などというと、「いや、あまり肉は好きではなく……」「すみません、和食はちょっと口に合わず……」ということも。
たとえば「老人ホーム」。ほとんどの施設で食事は提供となるので、入居前に「試食は必須」と心得ておきたいもの。ひと口に「老人ホーム」といっても、食事に対する考え方やこだわりはこだわりは異なるので、自分の好みに合った食事が提供される施設というのも、老人ホーム選びのひとつの基準です。
――母が老人ホームに入居して1ヵ月
そう投稿した、50代の女性。ホームに行き、1ヵ月ぶりに母親に会うといいます。夫(父)を亡くして10年。一人暮らしを続けてきましたが、80代になり、毎日家事をするのが億劫になったため、施設への入居を決意したといいます。
母親が譲れない条件としてあげたのが「食事がおいしいこと」。入居費が高くなっても妥協したくないと宣言をしたといいます。母親の年金は、月15万円程度。足りない分を亡父の遺産や貯蓄から出し、さらに月15万円ほどはプラスしても大丈夫とシミュレーションしたといいます。
それから母娘で色々なホームの見学&試食会に参加し、食の好みに合致するところを見つけたとか。
――試食会付の見学会に連れまわされ、20件ほど参加。もう、母の好みに合う老人ホームなんて、見つからないと思った
母親は老人ホームに意気揚々と入居していったといいます。そして1ヵ月ぶりに元気だな姿が見られると思い面会に行った女性でしたが、ふと母の異変に気づきました。
――あれっ、なんか痩せた?
以前よりも頬はこけ、明らかに痩せたのが分かったといいます。どことなく元気もない……話をしていくうちに、母親は嗚咽を始めたといいます。
――食事が口に合わない、食事がのどを通らない
「えっ、あんなに試食をしたのに?」と、あまりの理由に驚いた女性。あとで分かったのが、試食会で口にしたのは、1年で数回提供される特別メニュー。母親が入居したホームは介護を必要とする人が大半を占め、普段の食事は母親にとって味は薄く、食材も柔らかすぎだったといいます。また献立はワンパターンで、似たような食材が多いのも気になる点だったとか。
――私を散々連れまわして、色々な試食会に参加したものだから、今さら「思っていたのと違った」とは言い出せなかったらしい
微妙に想像していた食事と違う、微妙に好みが違う……そのようなことが積み重なっていくにつれて、段々と食事の時間が苦痛になっていったといいます。「このホームは母には合わない」と、女性は母を退去させたといいます。
老人ホーム選びで、食にこだわるなら試食会への参加はマスト。しかし、試食会で口にしたものが普段の食事で提供されるとは限りません。普段の提供される食事と差異はないのか、きちんと確認しておきたいところ。また味だけでなく、「献立はバラエティ豊かであること」「食器や盛り付けへのこだわり」などもチェックしておきたいポイントです。さらに人員が限られ簡素なメニューになりがちな朝食メニューもチェックできれば、食へのこだわりをきちんと見定めることができるでしょう。
また施設によっては、あらかじめ用意された献立から好みのメニューを選ぶことのできる「セレクト食」を提供するところも。何よりも食にこだわりたいというなら、メニュー選択ができる施設を選ぶのも、ひとつの手かもしれません。
[参考資料]