米国でのインフレ抑制策としての継続的金利上昇を受けて、2022年後半から2023年にかけては米ドル建て債券投資の仕込み甲斐のある期間となりました。しかし、外貨建て債券投資を成功させるにはいくつかのポイントがあります。本記事では、60代の2人の事例とともに「米ドル建て債券投資」の典型的な成功例と失敗例について、ニックFP事務所のCFP山田信彦氏が解説します。
60代、同じ時期から「米ドル」で投資をスタート…“老後の不労所得が確定する人”と“痛い目にあう人”の決定的な差【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

外貨建て債券投資の3つのリスクと成功哲学

外貨建て債券投資のリスクを教科書的に整理すると以下の3つに分類できます。

 

1. デフォルトリスク

いわゆる債券発行元の信用リスクです。米国債がもっとも安全といわれていますが、一定以上の格付けを保有する民間会社の社債も検討に値します。大田さんの場合は米国債よりも利率のよい日本の財閥系メガバンクが発行した社債を選択しました。

 

2. 金利変動リスク

「金利が上昇すれば債券価格は値下がりし、金利が下落すれば債券価格は値上がりする」というのが債券投資の基本原理ですが、償還日まで保有していれば額面価額で償還されます。つまり中途売却に迫られる可能性のない資金で購入して、タイミングを計り自分自身が納得できる利率で購入するのがコツとなります。

 

3. 為替変動リスク

外貨建て債券投資の場合は、当然為替リスクも含有するので債券購入時よりも円高になれば為替差損が発生します。しかし、大田さんの米ドル建て債券投資の問題意識は、短期での為替差益狙いではなくて、投資戦略として自らの金融資産の一部を米ドルにして保有することであり、債券自体はその置き場所の選択肢のひとつに過ぎませんでした。

 

大田さんによると、今後10年間に渡り年2回のペースで支払われる米ドルベースでの利金を直ぐに円転するか、米ドルで再投資するかは、その時々の状況で判断するとのことです。

 

以上、柴田さんの失敗例と大田さんの成功例、並びに外貨建て債券投資のリスクについて見てきました。

 

まとめると、外貨建て債券投資の成功哲学は「一定の先進国外貨保有こそが金融資産保全になるとの発想を持ち、信用力のある発行体の債券を、中途売却する可能性のない資金で、絶対値的に本人が納得できる利率で購入して、償還日まで保有する」ということになります。

 

 

山田 信彦

ニックFP事務所

代表